第23話 妹が二人?

 

「兄ちゃんごめんよ~~キャンセル料とか私が払うからぁ」

 私はベットで寝ながら兄ちゃんにそう言って謝った。

 兄ちゃんはベットの横にじっと座り私を見つめている。


「いいんだよ、はるの身体の方が大事だからな、それにちょっと嬉しい」

 ケラケラ笑いながら兄ちゃんがそう言う、嬉しいっどういう事?


「嬉しいって、私が風邪ひいて熱出したのに?!」

 その言葉に思わず酷いと私は思った。

 私が悪いとはいえ具合が悪いのに嬉しいとは何事だ!?

 ちょっと怒り気味で何でよと聞き返す。


「いや、だってさ、はるって遠足とか修学旅行とか、家族旅行とか、楽しみにしてると決まって熱出してだんじゃん? だから 今回そんなに楽しみだったのかってさ」


「え? えっと、そこまでは……」

 まあ楽しみにはしてたけど、今回はちょっと違う気がする……ああ、でも私……自分が思ってるより楽しみだったのかな? だって今……泣きたくなるほど残念だもん。


「旅行はまた今度で良いよ、今はしっかり治さないとな、ほらお粥作ったから食べな、薬と水は今準備するから」

 兄ちゃんそう言って立ち上がり、部屋を出ていこうとする。


「兄ちゃん……」


「ん?」


「ううん、何でもない……」


「そうか……」

 一瞬春なら食べさせてって言うと思った。

 でも今は、春よりも陽でいたいってそう思った。


 兄ちゃんが部屋を出る。

 うう何か熱のせいなのか変な汗かいちゃった。

 お粥を食べたらもっと汗出るけど、このまま食べるのはちょっと嫌だな、食べる前に着替えを。

 そう思い私はパジャマを脱ぐ……。


「あ、そうだ! はる、食べさせてやろう…………か」


「…………」

 兄ちゃんの声は聞こえるけど姿は見えない。

 だって今脱ぎはじめてちょうど頭の位置にパジャマがあるから。



「にいいいいちゃんのおおおおおおおお、ばかあああああああああああああああ入る時はノックしろおおおおおおおお!!」

 私は慌ててパジャマを戻し、その辺りにある物を適当に扉の方向へ投げる。


「ま、待て、ごめん、悪かった、あああ、お粥はやめろ、はるが火傷するし片付けが……」



「いいから、早く出てけえええええええええええええ!」


 慌てて扉を閉める兄ちゃん、あああああああ、み、見られたあああああああ!


 うわああああ、うわあああああ……見られた、兄ちゃんに胸見られた……。

 今ジーーンと来てたのに、兄ちゃん優しいって思ってたのに、うわあああああ全部台無しだああああああ。


 ううう、せ、せめてブラして寝れば良かった…………誰だ! Aじゃ意味無いって言ったやつ、買うぞ今喧嘩なら誰からでも買うぞおおおお!!

 あああああ、もういやああああ……。


####


 その後兄ちゃんは薬と水を持ってノックをしてから入って来る。


 じと目で兄ちゃんを見る私に、「見ていない見えなかった」と散々と言って謝って来る。


 えっと……何? あれだけはっきり出して、丸出しにして見えなかったって言ってるの?……なんだ? 嫌みか? 戦争か?

 むしろ見えたごめんって言ってくれた方がまだ良かった……あああああどうせ無いよ見えないよ!


「良いからもう寝る、出てって!」

 そう言って兄ちゃんを部屋から追い出し私は布団をかぶり寝る事にした。

 うう、叫んだおかげで悪化した。

 本当に具合も悪い……でもこういう時に親が忙しいのは不便で、私の昼ご飯や夕飯は結局兄ちゃんが作る事になる。

 ……でも……せめてこの週末だけは抗議として口を聞いてやらないと決め私は殆ど部屋から出なかった。


 翌日、熱もだいぶん下がったし、何か暇潰しと甘いものが食べたくなった私は、兄ちゃんに頼むのもしゃくなのでそっと家を出てコンビニに行くことにした。


 兄ちゃんは私が部屋から出てこないと思っているのか? 今日はリビングには居なかったのでバレずに外に出る。


 兄ちゃんが部屋に居るかは確認していない。

 昨日は旅行をキャンセルしたし、私に気も使ってくれたから、私の胸を見た件は今日一杯で許してやろう、私はそう思っていた。


 家を出てコンビニ迄は5分位、私は少しふらつく身体でコンビニに向かう。


 そして暫く歩いていると家から少し離れた場所でこちらを見ている女の子に気がつく。


 年は中学生位? 背格好も私に近い、自分で言うのも何だが可愛いらしい少女だ。

 黒髪ロングを二つに分けている、要するにツインテールの少女がこっちをじっと見ている。


 私がその娘を見ていると、向こうは少し驚いた顔をしていた、うーーーーん、知らない娘だな?

  私は一生懸命その娘の記憶を探るが出てこない……。


 そのまま考え込んで居ると、その娘は私の方に歩いて来た。


 え? まずい? 見すぎた? その娘は真っ直ぐこっちに向かって来る。

 まるで私を知っているかの様な表情、目線もしっかりと私に向けている。

 ……でも私は知らない。

 その娘は私の前に立ち止まると私をじっと睨む……えっと何? 怖いんですけど。


「えーーーっと誰だっけ?」

 私がそう言うとそれを被せる様に私に向かってその娘は言った。


「あなたが海の妹さんね」

 突然兄ちゃんの名前を言った、そうか兄ちゃんの知り合いか……。


 兄ちゃんの知り合いなら妹としてはちゃんと挨拶しないとねと外面を気にして私は笑顔で答えた。


「こんにちは、妹の陽です、えっとあなたは?」

 私がそう言うと、その娘は私をさらに睨み付け、そして……とんでもない事を言った。


「あたしは……あたしは海の……海お兄ちゃんの……妹の……春香です!!」


「………………え? ええええええええええええええええええええええええええ!!」

 突然の告白。

 兄ちゃんに妹がいた? え? うちって3人兄妹だっけ? 聞いたことないんですけど……ああ、何かまた……熱が出てきたよ。


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