第9話

 

 クラスでは合格した話をたまに聞く。


 俺はその話を聞く度に辛くなる。


 幼馴染の花井さんが俺に話す。

 「勇者、本当にもういいの?」


「はい。心配してくれてありがとうございます。」


「勇者は私と一緒に働くからいいよね。」


「はい、よろしくお願いします。」

 

ーーーーーーーーーーー 

 花井視点

 私は今の勇者を見るのが辛い。


 勇者は誰よりも優しくて誰よりも頑張る人だ。

 その心に私は救われた。


 昔のキツい性格も治り友達も増えた。


 勉強は嫌いだったけど、勇者の勉強を見ることは楽しかった。

 勇者が解けて喜ぶ顔が好きだった。私にとっては勇者の勉強の時間は宝だった。


 だから勇者には諦めて欲しくなかった。まるで私達の今までが否定されるようだ。


 でも勇者を見るとしつこく強く言えない。勇者はきっと辛い覚悟で、重い現実を彼なりに考えて受け止めた結果なのだろう。私も正直勇者が合格出来るとは思っていない。


 「花井さん?」


「あ・・・勇者」


「どうしました?辛そうな顔をしてましたよ。大丈夫ですか?」


勇者は優しい。馬鹿なのに人の心配をよくするのだ。


 「勇者・・・じゅ」

 勇者の顔見て分かった。


 そうか、私は勇者の勉強する姿が好きだったんだ。


 これ以上言ったらただの私のエゴだな。


 でも私は、

 

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