第2章「超大型神器・遺跡図書館トート」

第9話「遺跡図書館トート・前編」

「ここも昔と変わらねぇな……」

「砂漠に用が無ければ誰も近付かないもの。それに、この辺りは今になっても人が住むことは無いし。」


竜化したニーザに乗り、途中の村で一泊挟みながら俺達はセシャト砂漠へと辿り着いた。

砂漠の灼熱の暑さで汗だく………、なんて事はなく、ニーザの冷却魔法で俺たちの周りだけ快適な気温になっている。

俺は村で買ってきた水のボトルを取り出して、人の姿になったニーズに渡す。


「ん、ありがと。探知魔法だと?」

「ああ、その筈だ。取り敢えず解錠するが、フェンリル達への連絡は済んでるか?」

「済んでる。その辺も大丈夫よ。」


遺跡図書館内部では、念話などの通信魔法は使えない。だから必要な連絡がある場合は一度トートから出てから連絡するなりなんなりしなければならない。

ニーザが問題ないと返すので、解錠キーの術式を起動する。

すると、凄まじい地響きが起きて砂の中から巨大な砂岩の建造物が現れた。

これが俺達の今回の旅の目的地、神造超巨大神器、遺跡図書館トートだ。

人界で起きた全ての出来事を記録している場所であり、人界で起きた事に限った話で言えば魔法、神術、剣術、人物、歴史、事件……それらに限らず本当に何でも記録され納められている。


ある理由から、気まぐれや今回の様な余程の事でもない限り足を運ばない場所でもある。

理由としてはまず、場所が場所で単純に行くのが面倒くさい事。

そして、遺跡図書館は常に移動し続けている。何故そんな厄介な作りにしたのかは分からないが、恐らく納められてる記録媒体が盗まれない様に、という幾つか張り巡らせた盗難防止の防衛機能の一つなのかもしれない。


最後の一つが、ここのコアが生み出した

ニーザはここに来るのは好きだが、司書に関してはとにかく関わりたくないらしく、来ても自分の目当ての物を自力で探している。

とはいえ、今回は流石に司書案件だ。

無視も出来ない。

解錠された重たい石扉から中に入り、薄暗く冷えた廊下を進み、奥の扉の前で止まる。


「1人ずつやってもいいけど、面倒だしアタシの配下扱いで認証済ませても良いわよね?」


ニーザの問いに「構わんぞ。」と返す。

それを聞いてニーザは認証用の魔法陣を組んでいく。

基本的には、入り口の解錠キーの術式とここの認証を済ませなければ中には入れないようになっているのだ。


「認証、魔界グレイブヤード現管理者ニーズヘッグ。同行者――夫あるし……、うるさいわよ中のアタシ!!同行者、ニーズヘッグ配下、アルシア・ラグド………。アルシア、聞いてないわね?」

「ああ、聞いてない。」


本来の姿の自分と器用に喧嘩したあと、圧を掛けられたので誤魔化す。

正直に言おうものなら抹殺されかねないからだ。


「……それはそれでムカつくわね。」

「理不尽じゃね?」


などとしょうもないやり取りをしている間に認証が完了し、最後の扉が開かれたので中に入る。

中に入ると、そこは外見の数十倍の広さはあるものの、内装はまさに図書館という見た目だった。

違うのは魔石による記録媒体があるくらい。

ニーザと2人、膨大な量の本と記録魔石に頬が緩むが、残念ながら今回はそれが目的ではない。

後ろ髪を引かれながら目の前に伸びる階段を登って、上の階に辿り着く。

そこには大きめの投写装置が設置されており、鳥の仮面をした男が映し出されていた。

恐らくだが、俺達が来ると知って先に出てきたのだろう。


「2000年ぶりだな。。」


俺がこの遺跡図書館の主である神の名を呼ぶと、目の前の仮面の男はゆっくりとその顔を俺達に向けた。


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