第4話「焔の化身」

「何でアンタが人間を襲う……!!」


そう叫びながら、鎖で鎧の魔族を両断する様に振り下ろす。が、それは頭上で構えられた岩の剣で受け止められた。

しかし、そんなのは予想通りだ。

俺は風の魔眼を起動させ、今度は鎖の切断力を上げた「裂空鞭」を使う。


風の力で炎が巻き上がるが、構う事なくそのまま何度も鎖を叩きつけてヤツの剣をその身体ごと叩き斬った。


「―――――――――ッッ!!」


(……………浅い!)

鎧の魔族はなんとか後退するが、完全には避けきれず、その頑丈な鎧がいくらか抉られ、悲鳴の様な咆哮をあげる。

中身は、空洞だった。

今度はバフォロスを取り出し、その顎で力を喰らおうとする、が……バフォロスは剣の姿のまま、何も反応しない。


「……ちぃっ!!」


俺の晒した隙を逃すことはなく、奴は体勢を整えて、続けざまに炎閃を何度も撃ち込んでくる。

服や身体の端を軽く焼かれながらバフォロスを盾にして一度距離を取る。

どういうつもりか知らないが、反応しないバフォロスを再び起動させようとするも、まるで拒絶するかの様にガタガタと揺れるだけで、力を発揮しない。

怯えている訳ではなく、傷つけるのを嫌がるように……、ならば………。


「いるか、こんなガラクタ。」


俺は冷たく吐き捨ててバフォロスを乱暴に放り投げた。

一瞬、投げ捨てられた事に怒るようにモヤを出して反応したが、追い討ちとばかりに分裂させた鎖を撃ち込んで隅の方に追いやる。


「命を預けてるんだ。肝心なところで力を発揮しない臆病者な剣なら、邪魔でしかない。」


俺はそれだけ言って鎖を構え直し、鎧の魔族と対峙し直す。


「悪かったな。こっからはちゃんと戦うよ。」

「――――――――――。」


一応詫びる俺の言葉に反応してなのかは知らないが、鎧の魔族は再び地嶽炎刃で岩塊の大剣を作り出して構えた後、空いてる片腕を飛ばしてこちらに飛ばしてきた。

どうやら先程よりも本気らしい。

俺は再び走り出し、雷の魔眼を起動して距離を詰める。


鎧の魔族が飛ばした腕が俺を捕まえるべくその手を開いて迫るが、雷を帯びた足でそれを蹴り飛ばした。

「雷纏」。その名の通り雷を纏って反応速度、威力、速度を上げる技だ。

感電させる事も出来るが、コイツには恐らく効かないだろう。

はじき飛ばされた腕がこちらに向き直り、その手を開いたかと思うと、今度は5本の指先から同時に炎閃が放たれる。


「………厄介なもんを!」


雷纏の移動速度で回避し、避けられない物は鎖で薙ぎ払っていくと、今度は足元が赤熱化していく。

地嶽炎刃ではない。指定した地点を爆炎で消し飛ばす、スルトが使う範囲魔法……


「紅蓮陣か……!」


躱そうとしたところで間に合わない。

水の魔眼を起動して、大孔陣を発動させる。

本来ならば大規模の水を発生させて敵を呑み込む技だ。

加害範囲が広すぎる為、中々使わない技だが紅蓮陣を消すのに使うなら問題ない。


紅蓮陣と大孔陣が同時に発動し、爆炎と津波の如き大量の水が要塞を更に破壊した。

俺は水蒸気に隠れ、目眩ましにしながら再度攻撃しようとするが、出来ない。

鎧の魔族は持っていた大剣を俺目掛けて投げつけ、俺が避けたところに両腕を飛ばして10本の炎閃を俺目掛けて放つ。

(埒が明かないな……)

クロノスの空間操作で全て弾き飛ばして次の手を撃とうとした時だ。

ブン……ッ、と耳障りな羽音が辺りに響いた。


その音と同時に、辺りを覆う炎と鎧の魔族が持っていた岩塊、そして鎧の魔族そのものが凄まじい振動と共に斬り刻まれる。


「……………!?」


突然の出来事に鎧の魔族は膝を付き、何処からともなく細身の何かがこちらに回転しながら飛んできたので、俺はそれを呆れながら掴み取る。


「まったく………自分で封印解くくらいなら最初からやる気出せよ。」


そうぼやいた俺の手には柄はそのままに、虫の翅と甲殻が組み合わさった様な細身の剣が握られていた。

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