【10000PV突破】災い起こしのアルシア〜二つの災厄と忘れられた墓標〜

最終話「ヴェルンドの村、出立」

ラヴァ・スライムを倒した2日後。

俺達はファルゼア王国へ帰還することになったのだが……。

俺達の目の前では今、中々面白い光景が広がっている。

「行ってらっしゃいませ、お嬢！！！」

「アルシアさん達の前では止めるように、って……私言いましたよね？」

どうにも俺達がラヴァ・スライムと戦っている間に何かあったらしい。

荒くれ者のドワーフ達――と、遊びと勘違いして混ざってる子ども達――がみんな纏めてアリスの舎弟と化していた。

まあ、そんな彼らをアリスは空気が凍りつくような笑みで見ていたが。

「………何があったんだ、アレ？」

「ああ。アリス嬢ちゃんが尻尾巻いて逃げ帰ってきたアイツ等に喝入れたんだよ。オメェにも見せたかったな……相当面白かったぞ。」

「これより面白いのかよ……、惜しいことしたな。」

どうやら相当面白い事になっていたらしい。

見れなかったのが本当に残念で仕方ない。

「大分堪えたのか、今までのマイペースさも消えてよ。こりゃあドワーフの歴史を変えた少女として、ここで名を残すぜ？」

「アリスは絶対文句言うだろうけどな……？」

俺とゴドーは顔を見合わせて、くつくつと笑った。

そして、俺は気になった事を聞く。

「けど、いいのか？」

「あん？何が。」

「アリスの着けてる篭手だよ。たしかに欲しいとは言ったけど……。」

アリスが着けているのは七元徳の一つ「正義の按手（あんしゅ）」だった。

頼んだのは俺だが、まさか神器（アーティファクト）が出てくるとは思わなかったのだ。

なので、どうするべきか考えていたのだが、ゴドーは豪快に笑ってから静かに首を振った。

「いいんだよ、らしくねえ。言ったろ？スルトの情報面で役に立てねえ代わりに俺らにできる事ならなんだって……てな。それに、あのお嬢ちゃんには村を救ってもらっただけでなく、ドワーフの悪い癖を治してもらった。俺らじゃ使えねえ……、倉庫でホコリ被ってただけのもんじゃ、支払う代金としては安いくらいだ。遠慮なく持っていけ。」

「……すまねえな。ゴドー。」

「いいってことよ。……なあ、アルシア。」

ゴドーはそこで区切って、えらく真面目な顔つきになった。

「…………相手は、彼らなのか？」

この騒動を起こしている黒幕の事だろう。

ゴドーは戦いには参加してなかったが、ラヴァ・スライムが放っていた気配を感じていたらしい。

顔つきが少しだけ険しくなっている。

「……たぶんな。」

「倒せるのか？」

俺はそれに対して、首を横に振った。

「おいおい……。」

「正確には、まだ分からないが正しい。たぶんだが、敵の形が見えた。強さは分からない。ただ、もし敵が彼らだった場合、俺達が束になって掛かっても………勝てるかは分からない。」

ゴドーが青褪めるが、俺はそれに構わず淡々と話す。

残念ながらそれが事実で、本当に敵がそれであるならば、俺達がどう足掻いても勝てないかもしれない。だが……

「まあ、奴らが相手なら、やるだけやってみるけどさ。倒せる可能性は別に0ではない。それに…、神を殺す力を持ってる人間が、ここに2人いるんだからな。」

そう言って俺は、元気にドワーフに説教をしている少女を眺めるのだった。

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第二部・完