第28話「嘘偽りなく破壊神」

「………それでその後、俺がゴネるにゴネまくって、トチ狂ってアダムの書を自分と同化させて、アダムの書が暴走。炉心にはなるが到底他の制御が出来ない状態になったから、フェンリルが仕方なく付き合ってくれて、大龍脈の修復と、俺がアダムの書と完全に同調して出てくるのに、結局2000年も掛かったっていう………」


などと当時の事を話すと、案の定、今を生きる者達まで白い目を俺に向けていた。


「あの、つまりアルシアさんは………」

「正しく破壊神だったんだね……。まさか、大規模侵攻のあとに、もう一度世界が滅びかけていたとは……」

「…………いやー。」


「「「褒めておらんわ(ぬわ)(ないです)!!!」」」


あの時と同じ様に誤魔化そうとして、あの時以上の人数に怒られた。悲しい。


「まあ、俺が2000年も眠りこけていたのは置いとい………むぐ!?」

「置くでない。妾まで汝の長い惰眠に付き合わせられたのだぞ?」


この手のお説教が一番効くと知ってるので、またフェンリルの胸に顔を押し付けられた挙げ句、こめかみをグリグリとされる。

何より今は宮廷魔導師の女性どころか、護衛の騎士まで怒りと妬みと殺気の視線を飛ばしてくるので、そろそろ解放してほしい。

割と本気で怖い。


「何か言うことは?」

「俺が悪かったので頼むから止めてください。」

「よろしい。」


ようやく離してくれたので、落ち着く為に息を整える。

文句の一つも言いたいが、こればっかりは俺が悪いので何も言えない。


「一つ聞くんだけど、本当に2000年もかかる作業だったのかい?」

「残念ながらな。アダムの書は炉心にはなりはするものの、強すぎて命令式を単体で受け付けなかったんだよ。俺どころか、その辺に長けたニーザが何をしようとだ。んで、無理矢理俺が同化して命令式無しで使おうって方向に持ち込んだ。」

「………無茶苦茶だね。そんなに強いのかい?アルシアの使うアーティファクトは。」

「俺のじゃなくて、この世に存在する全てのアーティファクトがだ。神器だろうが魔装具だろうが、それぞれに優劣はあっても、それでもその一つ一つが強力だ。まず壊れる事はないが万が一、壊れようものなら一番良くて大陸くらいは軽く消し飛ぶ。平原なんか比じゃない。」


「た、たい―――――――!?」


俺が一番低い威力を言っただけで、聞いていたディートリヒが青褪めた。アリスはそんな物を2つも持ってるという事を知って気絶しそうになり、フェンリルに抱き留められている。


「因みにその一番良くて……つまり、一番弱いのは、たぶんこのバフォロスだ。本来はこんな変な名前……痛い痛い!やめろバカ!……違う名前と、ニーザの爪と鱗、フェンリルの魔力で抑え込まれてるから更に弱くなってる。」


変な名前と呼ばれてモヤを出して頭に齧りついてくるバフォロスを避けながら、そう説明する。


「あの平原を消し飛ばして、まだ……?」

「これでも弱い。因みにアリス。アーティファクトは神が総出で壊しにでもかからなきゃ到底破壊できないから安心しろ。人間じゃ間違いなく壊せん。」


それを聞いてアリスがホッと胸を撫で下ろす。

彼女の場合、聖杖ですら投げそうだからな。


「取り敢えず、アーティファクトの話は長くなるから、また今度だ。2000年も掛かったのは他にも理由がある。」


そう言って俺がある物を出そうとすると、先にニーザがそれを空中に投写した。

それは、ある演算魔法の計算結果だった。





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