第22話「気絶する少女」
「終わったようだな。」
抉られた雪山の岩肌を見て、フレスは静かに呟き、俺もそれに頷いた。
「ああ。さっきもアイツに言ったが、あのマグジールは端末体だな。あそこで見逃しても、禍根にはなるが、なんの得にもならない。」
「そうだな。確かなのは、奴はこの件にしっかり絡んでいて、私達にしっかり関係のある話でもあるという事だ。」
「………まったく、はた迷惑な話だ。取り敢えず、帰ろうぜフレス。回収した武器をアリスに渡して、今日あった事をアイツ等にも伝えないと、な?」
その言葉にフレスは頷いたあと、純白の鷲へと姿を変えて、俺達はスノーヴェール雪山を後にするのだった。
◆◆◆
翌日の夜。帰りは何事もなくファルゼア城へと辿り着く事が出来た。
来賓室へと向かうと、既にフェンリル達はソファーで寛いで、茶菓子を摘んでいた。
「帰ったか。予定通り3日の旅じゃったの。」
「お帰り、2人共。色々話はあるでしょうけど、今は休みましょう?」
「お帰りなさい。アルシアさん、フレスさん。大変だったと聞きましたが、大丈夫だったんですか?」
アリスが心配そうに聞いてくるので、問題ないと返して、彼女の側に立つ。
「ただいま、みんな。さて、アリス。早速だがスノーヴェール雪山でアリスに合う武器を持ってきた。俺はただ回収しただけだから、礼ならフレスに言ってくれ。」
そう言うと、アリスは今度は慌てたように首をブンブンと横に振った。
「そんな事はありません!アルシアさん達には素敵な杖もいただきましたし、銃まで用意してくださいました。もう、何てお礼を言ってよいのやら……。」
アリスが俺達に深々と頭を下げるので、何とか宥めた後、俺は収納魔法からフレスに渡された銃を一挺取り出して、アリスに渡した。
「ありがとうございます。………ところでアルシアさん、フレスさん。」
アリスは渡されたそれを見て、最初は嬉しそうにしていたが、段々と引き攣った笑顔に変えて不安そうに俺達の名を呼ぶ。
フレスはいつも通りだが、予想通りの反応に俺は笑うのを必死に堪えた。
見ると、フェンリルもニーザも同様だ。
「………何だ、アリス。」
「この銃、とても神々しいんですが……なんて言うか、その…………アルシアさんにいただいた、イブの聖杖に雰囲気が似ているというか……。」
「ああ、そうだ。今すぐ用意出来て君にピッタリな装備がそれしか無いんだ。」
アリスは手渡された、金色の装飾の入った純白の銃を見ながらカタカタ震えて恐る恐る聞いてくる。
俺が何かを言う前にフレスが出てきて、説明を始めた。
「受け取ってくれ、リアドール君。神器である七元徳の一つ、「希望の聖銃」だ。」
「はわっ!?」
アリスは限界だったのか、その名を聞いてぴしりと固まった。ニーザとフェンリルも、アリスの反応がおかしくて笑いだしてしまった。
しかし、俺は今笑う訳にもいかないので、堪えながら伝え聞いている話の範囲を説明する。
「七元徳……、俺の持つ大罪の魔装具の対……又は類する関係にある神器の一つだ。それぞれが神や高位魔族に匹敵すると聞いているよ。その銃の弾丸は使用者の神力によって、自在にその力を変えるらしい。だから大事に使ってやってくれ。」
「………………きゅう。」
俺の伝えた内容を聞いて限界に達したらしい。
アリスは短い鳴き声を上げて気絶してしまった。
「アリス!?しっかりしなさい!」
「アリス、起きよ!たかだかアーティファクトの一つで気を失うでない!?」
気絶したアリスに笑いながらもニーザ達が心配して駆け寄った。
いや、フェンリルよ。俺が言うのもアレだが、アーティファクトなんて早々一人で2つ3つ持つ様な物ではないぞ、本当に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます