第24話「人魔戦争の真実・2」

「あいつら……。よくもまあ、そんな凝った真似を。」

「まったくじゃな…。まったく、人間とはいつも面白い。久々に呼ばれたよ、賢将などと。」


最後まで魔王討伐に反対意見を示した2人を思い出す。

彼らは立場は違えど、当時意味の分からない屁理屈で無理矢理外交を断たれた魔界を気にしていた。

何かあれば自由の効く俺に重要な情報などを持たせて伝えていたりと、出来ることは何でもしていたのだ。

そう、当時の事を振り返っていると大臣が話に入ってきた。


「あの、賢将や斬将……というのは。それに、今の話では彼女達が同族である魔族を……」

「それは彼女達、高位魔族の本来の役職の事だ。フェンリルもニーズヘッグ達も、魔界とそれらを統べる魔王……それに仕える幹部だ。そして……」


そこで言葉を切り、大臣に目を向ける。


「フリードの言った通り、彼女達は俺と一緒に同胞である魔族を殺して回った。。」

「人類を守る為に、同胞を……、何を馬鹿な事を!ならば、何故最初から配下の魔族を止めないのです!」


大臣の言葉に皆が一様に頷く。

フリードもディートリヒも頷きはしないものの首を傾げている。

なるほど、と頷く。知らなければそういう反応にもなるか。


「フリードも先生もそこまでは?」

「すまない。彼女達が魔族を倒して回ったのは知っている。だけど、どうしてそんな事をしていたのかは分からないんだ。それに纏わる資料なども国中を探しても見つからなかった。」


ディートリヒもそれに頷いた。


「そうか。なら、そこも説明しなければならないか。」


一度フェンリルに視線を向けると、静かに頷く。喋ってもいいという事だろう。


「まず、魔族はどういう物と認識している?どんな形でもいい。」

「人間に襲いかかるもの、それと、人類を滅ぼす為に動く存在、でしょうか……。でも……」


この問いにはアリスが答えた。ちらっと、隣に座るフェンリルを見て。


「半分当たりで半分正解だな。魔族が人を襲うのは間違いない。だが、人類を滅ぼす気はない。それはアリスが知るフェンリルを見れば明らかだな?」

「はい。一緒にいた時間は1日に満たない時間ですが、私にはフェンリルさんが人を滅ぼそうとする人には見えません。それに、初めて会って、助けてもらった時に言ってたんです。高位魔族は無闇に人を殺さないと。」


その言葉に、城下町でのやり取りの時に居た兵士が思い出したように呟く。


「たしかに、フェンリル殿は言っていました。無闇に人は殺さない。ここで死ぬのは挑んだ者のみと……」

「言ってた、たしかに言ってた。それに、あの場所を凍らせた時も、町の人にも、建物にも何の被害も無かったぞ。」


その言葉に周りがざわめく。


「そう。彼女は、いや……彼女達高位魔族は自分や仲間に危害が及ばない限り、人間に危害を加えるような真似はしない。」

「では何故、他の魔族が人を襲うのは止めないのです?」


大臣が気になった事を口にする。良くは無いが、ある意味良い質問だ。


「高位魔族より下の位……下級魔族から特急魔族までは人が挑み、乗り越えねばならないからだ。」

「挑み、乗り越える………?」


要領を得ないとばかりに大臣は首を傾げる。

俺はそれに答える前に、フリードとディートリヒを見た。

ここからは複雑な話だからだ。


「我々が倒す魔族。それは。」


その言葉に、それを聞いた者達の全てがざわついた。

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