第7話「プリースト?」
「キキィィッ!!」
甲高い鳴き声を上げて襲いかかってくるゴブリン達目掛けて、私はフォトン・ウェーブを全力で発動してそれらを薙ぎ払う。
光の奔流によってゴブリンだけでなく、オークやスライム達も吹き飛んでいく。だが……
パキンッ、と乾いた音がして手元で杖が折れてしまった。
(たかだか中級魔法一発を全力で撃った程度で……!)
私が戦闘が下手な理由……それは力加減がまったく出来ず、いつも杖を壊してしまうからだ。
戦闘術の授業に於いても、どの先生も頭を悩ませてしまい「それが無ければアーク・プリーストにもなれるのに……」と言われる始末だった。
故に私は複数本、杖を持ち歩いている。
初めは学園が――私の能力調査目的も込みで――ミスリルやチタン、果てはオリハルコンやアダマンタイト製の杖まで用意してくれたのだが、精々数時間、よくて何日保つか程度で破壊してしまうので、学園が気にして用意してくれるのも構わず安価な杖を何本かと、念の為に強い杖を一本持ち運んで使用する様にしている。
魔銃を持っているのも、杖が無くなった時の為だ。
加えて、先生が頭を悩ませる理由はもう一つある。
それは私が………
「えぇいっ!!」
「ぎぁっ!?」
杖の先端部分を顔面に投げつけられたゴブリンが悲鳴を上げる。
そう、私がプリーストらしい戦いをしないからだろう。
使えなくなった杖は用が無くなれば投擲物として投げつけるし……
「せぃ!」
「ガぅッ!?」
初級魔法のフォトンを放つでもなく、拳に纏わせて魔族を殴り倒すので「プリーストを辞めて武闘家になった方がいいのでは?」と指導に来てくださった神父様にまで言われてしまった。
まあ、残念ながら適正ではプリーストが一番で、武闘家適正は2番目くらいだったのだけど……。
抜け出る方角にオークとコボルトの群れがいるので、今度は新しい杖を取り出してフォトン・ブラストを叩き込んでいく。
砕けはしなかったものの、次の魔法を撃てば壊れてしまいそうなので、コボルトの右手目掛けてフォトンを纏わせて投げつけ、持ってたシミターを弾き飛ばして奪うと、そのコボルトと、フォトン・ブラストで仕留めそこねたオークの首を落としていく。
「グオォオオッ!!」
仕留めたオークとは別のオークが斧を振り下ろしてくるのを奪ったシミターで受け止めて、腰から下げた魔銃を数発、オークの首目掛けて撃ち、怯んだ隙に要らなくなったシミターでオークにトドメを刺して、代わりに斧を奪う。
その直後「ドォンッ!」と背後で爆発が起きたが、先程こっそり設置した魔道具だろう。後ろから来た大量の魔族が吹き飛んでいた。
今のところ怪我は無いし魔族も大した事はないが、一つ気づいた事がある。
「……さっきより数が増えてる。」
魔力探知も忘れずに行っている為、気付いたのだが先程は100程だった魔族だが、どういう訳か今は倍程に増えている。
中級相手でも負けることはないが、幾らなんでも数で押されれば話は別だ。
一方向に絞って動いてる分、森からは抜けられそうな位置にいるが、このままでは武器も魔力も保たない。
どうすれば……、と思いかけたその時、恐れていた事が起きた。
背後の異様な気配のパターンが変わったのだ。
そして、その気配の方向を向いた直後、無数の蒼い狼の様なモヤが地面を突き破って現れ、周囲を蹂躙し始めたのだった。
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