第44話 再会
『げるろぼ』を通して大型戦闘機体を操作する彼女は、周囲に目を配りつつ困り眉になる。
「色々話したいことはあるんだけど……今はこの状況を、何とかしないとね」
そう言い残して、近くで戦闘していたノーヴァス・レギニカへ突撃していった。
叶瀬も慌てて、他の隊員達の加勢に入る。
星乃の活躍は凄まじく、少しずつ確実にノーヴァス・レギニカの戦力を削ぎつつあった。
しかし、動けるノーヴァス・レギニカが片手で数えられるほどまで減ったところで、誰かが叫ぶ。
「新しい奴が来てる!」
「なにっ」
叫び声へ追従するように、ジャングルの奥から重い足音が伝わってきていた。
また、別の隊員が報告する。
「動体反応、複数検知しました。数は……8体!」
「相手してられん。一時撤退だ!」
「はい!」
こちら側の損害が増すばかりだと判断した烏賊田が撤退命令を出した。
ノーヴァス・レギニカに追撃をかけられながらも、ある者は囮となり、ある者は攻撃して撤退の実現に貢献してくれる。
「はあ、はあ、はあ……」
船へ戻ってきた頃には、追いかけてくるノーヴァス・レギニカはいなくなっていた。
予想外の事態の連続で、SROFA隊員からレギニカまで全員が疲弊している。
作戦立て直しのため、休憩時間が設けられた。
そこで叶瀬はようやく、落ち着いて星乃と対面する。
「星乃さん。どうしてここに……」
「無理言って乗せてもらったの。『テッカー症』の解決策が見つかるかもしれないって聞いて、じっとしてられなくて」
「ホントにしつこかったのよ~……? 医療部隊に逐一体調を報告する、って条件で、特別に乗せることにした」
星乃が叶瀬の疑問に答えると、背後から美優が現れて補足してくれた。
叶瀬の顔を見る星乃は、頬が緩んでいて嬉しそうな様子を隠さない。
「いやあ、元気そうで何より。……今は千帆と?」
「ああ、はい。千帆さんと一緒に、行動するようになってます」
星乃は近くにいた千帆をじとりと睨みつけた。
「千帆ー? 叶瀬くんをいじめたりしてないでしょうね?」
「するかよ、そんな事。前の教育係がクソだったから、鍛え直してやったんだ。感謝してほしいね」
「ああ~ん?」
千帆から返された嫌味ったらしい口ぶりに乗せられ、星乃は彼女へ顔を近付ける。
近付いてくる星乃の額を手で押さえ、千帆は「それよりも」と尋ねた。
「あのデカい戦闘機体は何だ? 見たことないぞ」
「ふふん」
待ってましたと言わんばかりに、星乃は得意げに胸を張る。
「彼は『げるろぼ』専用の戦闘機体! 私が『げるろぼ』を操縦するように、『げるろぼ』がより大きな戦闘機体を操縦しているの!」
「えーっと……つまり、重ね着みたいな?」
「まあ、そんなところかな。中が『げるろぼ』だから衝撃にも強いし、外が金属製だから斬られにくい。弱点を補って、さらにパワーアップしたんだよ!」
新しい武器を手に入れた『げるろぼ』について熱く語っていた。
その様子を見て、初めて『げるろぼ』を紹介してもらった時の事を思い出し微笑ましくなる。
「なんにせよ、一緒に居てくれるのは心強いです」
叶瀬は嬉しい気持ちを、素直に口に出した。
会話が一段落すると、周囲の話し声が耳にへ入ってくるようになる。
「ノーヴァス・レギニカとやらがわんさか徘徊しているし、爆弾の設置なんてできねぇよ。一体どうするんだろうな」
「カブラギも捕まえられないどころか、再生能力が高すぎて無力化すら難しい。問題は山積みだぞ……」
隊員達が語る通り、『カブラギの捕獲』と『船の爆破』。
この2つの目的には、どちらも高い壁が阻んでいた。
そんな話に眉をひそめる星乃達の元へ、樋口がやって来る。
「『捕獲班』の皆さん、ここにいましたか。ちょっと、烏賊田さんに呼んできてほしいと言われまして。……あ、千帆さんも来ていいっすよ」
「……?」
突然の呼び出しに首を傾げながらも、一同は樋口を先頭にメイン操縦室へと向かった。
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