第11話 アサシン・メイド、悪逆王女の命に迫る――!(※シャロ視点)

 アタシはシャロ=コールデット、国一番ではないけれど、恐るべき暗殺者。


 今まさに、悪逆王女として国中に名の知れている、ミルフェ=エラ=マギアを暗殺するために忍び込んでいるわ――ね!


「フッ、アタシのあまりにも冴えた計画性が怖い……人手不足なのか何なのか、トントン拍子でここまでこぎ着けたし。こういう方向性の暗殺もあるのね……盲点だったわ……!」


 そういえば他のメイドさん、こんなこと言ってたわね。


『悪逆って有名な王女様の給仕きゅうじなんて……怖いわ……』

『間違えて機嫌でも損ねたら、どんな罰を受けるか……』

『食事を運んでも、目も合わせられないのよね……恐ろしくて……』


 さすが噂の悪逆王女、恐怖で支配してるわね……まあそのおかげで、アタシが自然と名乗り出ることができて、今こうして食事を運んでるんだけど。


 ううん……もしかすると実際、気まぐれに従者の命を奪うくらい、日常茶飯事なのかも。国中で悪逆と知れ渡るくらいだもん、そうに決まってるわ。



なんて、許しておけないわ! としてそう思う!)



 グッ、と握りこぶしを作り――そんなことを考えている内に、アタシは塔の最上階、悪逆王女の部屋の前に辿り着いた。


 まさかこんな所まで暗殺者が忍び込んでいるとは知らず、今頃は呑気に紅茶でもすすっていることでしょうね……国一番の暗殺者、ソウマ=クサナギですら成し得なかった仕事を、このアタシが成し遂げてみせるわ!


(そしたら……ソウマもアタシのコト、認めてくれるはず……いや別にそれが目的じゃなく、あくまで仕事、仕事の結果なんだけど。まあでも? 実力を認め合った者同士が、なんかこう互いに分かり合った果てに、深い仲とかになっちゃう可能性だって、無くはないと思いますけど? まあ別にそれが目的じゃないんだけど、なったらなったで、その時はその時―――と、とにかく!)


 今は、仕事の時間……国一番の暗殺者のように、、ただ仕事を完遂するのよ。そう、国一番の暗殺者のように……フフッ。



 なんかわ―――!



 よし、この勢いならイケル気がする。確信したアタシは、叩き付けるように扉を開け放ち。


 大声で名乗りを上げながら、ターゲットたる悪逆王女に迫る――!



「覚悟しなさい、悪逆王女―――暗殺者、シャロ=コールデットが、アンタの命を奪いに来たわ―――!」


「まあっ、いらっしゃいませっ♪ 可愛らしい暗殺者のお嬢さんっ♪」


「へ? …………へ?」


 ……………………。


 へ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る