第32話

アトラス国王が令嬢四人の処遇を決めるという。


「なら、嫌な思いをしたわたくしの意見は、提示すれば反映されるのかしら?」

ファラトゥールの呟きにセレムは「恐らくは」と頷いた。

「そう。まぁ、採用されるかは別として要望書という事で、お渡ししましょう」

そういいながら、アトラス国内の知り得る限りの情報を忙しなく頭の中で精査する。


王命を軽んじていたから、陛下は何らかの王命を下すかもしれない。

確か最近、アトラス国と国交開始した国があって、交換留学と言う名の婚姻の話が出ていたはずよね。

三番目四番目の令嬢あたりが身分的にもいいかも。


四番目は微妙だが、三番目は貴族教育がかなり完璧だったのを踏まえて、他国へと放出しても問題ないだろう。

ファラトゥールの中では、この二人には王命の何たるかをその身で体感して欲しいと思っている。


あと、ガルーラ国とは反対側の国境を守る辺境伯もなかなか嫁が決まらないって嘆いていたなぁ。

アトラス国内では、快諾してくれる令嬢がいないとか・・・

結婚のお披露目の時に話をさせてもらったんだけど、辺境伯って確か見た目が熊だけど、めっちゃいい人だったんだよね。どうせなら、公爵じゃなくて辺境伯に嫁ぎたかったって思う位いい人。

いつの世も、若い娘はビジュアルで選ぶからね。だけどさ、いくら顔が良くても、性格が難だと長続きしないでしょ。公爵みたいに。

私が思うに、気の強そうな一番目の令嬢が辺境伯とあいそうな気がするんだよね。彼女、単純バカっぽいけど、辺境伯の見た目と性格のギャップにコロッといきそうだと思うんだ。意外と愛し愛されカップルになるのかも。

あれから考えてみたんだけど、一人目令嬢って、この社交界であまりいい扱いはされてないと思うんだよ、多分。家族との仲もどうなのか疑問よね・・・調べてないからわかんないけど。

まぁ、そこら辺は王家に調べてもらうけど。


あの厚塗りを美人だとかなんだとか、もて囃されているのを見ると、周りから馬鹿にされているのが見て取れた。

恐らくこの公爵家に突撃してきたのも、周りの人間に持ち上げられてだろう。

何だかんだと言っていたが大してダメージもなく、セイリオス国にいた時の貴族令嬢達とのドロドロとした付き合いを思い浮かべれば可愛いものである。


それに私、ああいう子って嫌いじゃないのよね・・・・ムカつくけど。


今では真っ白いのっぺらぼう程度にしか思い出せない令嬢だが、辺境で幸せになって欲しいと、既にファラトゥールの中では嫁入りが決まっていた。


さて、次は二番目令嬢だけど・・・・

二番目令嬢は妊娠してるからなぁ・・・・腹の子の父親と結婚させればいいか。

確か父親の名前は・・・・


「ジェンティル・ドワン・・・・」


ぽつりと呟いたファラトゥールのの言葉を拾い、セレムは驚いたように彼女を見た。

「殿下、何故その名前を・・・・」

「二番目に来た令嬢のお腹の子の父親だけど」

「え?それは本当ですか?」

鑑定魔法の事は言えないが「本当よ」としれっと返せば、考え込むように「信じられない・・・・」と一言。

「それは何故?」

「ドワン侯爵は愛妻家で有名で、奥方以外の女性の話は一切聞いたことが無いのです」

それを聞いてファラトゥールは驚く。


嘘でしょ!だって彼女のステータスに出てたわよ。「ジェンティル・ドワンの愛人の一人」って。

「の一人」って事は他にもたくさんいるって事じゃん?彼女も、彼だけと関係持っているわけじゃないけど。


う~ん・・・と考えた後、絶対にその筋の女性達の間では女にだらしない事で有名だったんじゃないかと、確信を持つ。

「それって男性側だけの噂ですよね。女性側からの噂って聞いてます?ドワン卿は彼女以外にも愛人持ってますわよ」

「な、何故、そう言い切れるのですか?」

「ふふふ・・それは秘密。でも、これは多分、ではなく、絶対です。調べてみてください。ですので、二番目令嬢はドワン卿に嫁がせるといいでしょう」


念願の愛人よ。侯爵家だから贅沢できるかもよ。


彼女の中での令嬢達の割り振りが決まり、ファラトゥールは満面の笑みを浮かべた。

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