第13話

アシアスの話を聞き、ペンダントが彼の手に渡った経緯は納得した。

そして今のガルーラ国の現状も。


王太子なのに、肩身の狭い思いしているのね・・・

でも、国王よりはこの国の未来の事を現実的に、真剣に考えているのはいいかも。

周りに恵まれてない所為か、全く前に進んでないみたいだけど・・・・


ガルーラ国の事をどうするか。ファラトゥールだけで処理するするとすれば、まさに力ずくしかない。

ガルーラ国内部に味方がいないからだ。

だがここにきて、王太子が目の前にいる。しかも父親である国王に異を唱え、もし力があればクーデターを起こしてもおかしくはない位には、民の事を思っている。


ファラトゥールは自問自答する。

こいつを味方にしてもいいのか。こいつを信じられるのか。と。

「お前には妹がいたな。その妹はどうなのだ?お前と同じ考えを持つのか?」

本当に誰も味方はいないのかと問う言葉に、アシアスの顔が曇る。

「妹・・・ルイナは・・・俺の味方ではあります。が、身体が弱く熱を出し寝込むことが多く・・・」

つまりは、栄養不足で免疫力が弱いって事ね。

「他には?」

「・・・貴族では・・・二家ほど俺の考えに賛同してくれていて、土壌改良や作物の品種改良を進めています。それ以外では、表立って味方をする家はないとみています。国王が怖いから。俺だって、後継者だからってだけで口ごたえしても殺されないだけですし」


なるほど・・・恐怖政治ってやつね。


「あとは、近しい直属の近衛騎士や、町の親しい人達くらいは・・・」

町の親しい人・・・つまりは平民。

平民と仲良くなるなんて、かなりの頻度で町に降りてるって事よね。


アシアスの話を聞き暫し考えながら、彼の瞳を見つめた。

どこまでも澄んでいるバイオレットダイアモンドの瞳は、嘘をついているようには見えない。

高貴さは垣間見えるが、どうもそのくたびれ感がすべてをチャラにしてしまっている気がする。


王太子と言われれば確かに着ている服もそこそこいい物だし・・・見えなくはないけど・・・

―――あっ!そうだ鑑定魔法!まだ研究段階だけど、試してみるのもいいかも!


前世の記憶が甦ってからの一週間。五百年前と同様、魔法の研究に時間を費やした。

恐らく使用人達がファラトゥールを構い倒したりしなければ、ひたすら研究だけしていただろう。

此処には彼女を止める夫婦はいないのだから。


空間収納魔法、飛行魔法がメインではあったが、その他にも色々手をつけていた。

鑑定魔法もだし、誰にも姿が見えない隠密魔法等々。

兎に角、前世でのアニメやラノベに影響されまくり、創作魔法リストを作ってしまう位は試したい魔法が沢山あるのだ。


どれ、まずは・・・・『鑑定』・・・・


心の中で唱えると、目の前にウィンドウが出て、男のステータスが現れた。


わっ!成功じゃん!私ってやっぱ天才ね!


自画自賛しながらそれを見ると、彼の言っている事は正しく、この国の王太子アシアス・ガルーラ 二十三歳 と出ていた。

状態で軽度な栄養失調とも。そして一つ、気になる状態も・・・・

それ以上に驚いたのは、聡慧、利根りこん明敏めいびん、英邁などという言葉が続くステータス。



驚いた・・・一人の人間を褒めた称えるにしてはいき過ぎな気がするけど、それだけ優秀って事?

これに「世知賢い」とか「腹黒」「狡猾」とかって言葉があれば、この国をもう少し早く何とか出来たのかもしれないけど。

清廉過ぎるわね・・・・・まぁ、味方に取り込むにはいいかも。裏切らなさそうだし、民の為とか言う大義名分をあげれば、良く働いてくれそう。


取り敢えずこの国の協力者は必要だったので、こちら側に引き込む事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る