第6話

ファーラの記憶があり魔力があっても、今の彼女には劇的に何かを変えられるだけの力など無い。

よってガルーラ国・・・・もとい、ファーラの土地なのにこれまでは何もできないという歯がゆい気持ちをいつも抱えていた。


力が戻った今では森の結界は簡単に解ける。だが、それをしてしまえば、三国から一気に攻められガルーラ国は消えてしまうだろう。

それは何としても避けたい。あの土地はファーラのものなのだ。

元々、人が住めるような土地ではなかったのに、どこぞのバカがファーラに対抗し結界を解こうとし、道を作ってしまったのだから笑えない。


しばらく、う~ん・・・と唸った後、「まずは魔法からよね」と、布団にもぐり込んだファラトゥール。

兎に角、今日は疲れた。しおらしく結婚式を無事に終えたと思ったら、セレムとの口論。そして前世の記憶の甦り。

セレムとは明日からは顔を合わせる事もないはずと思うも、いまひとつ不安なのは彼と隣の部屋だという事。


嫌なら、この部屋から最も遠い部屋でも用意してくれても構わなかったのに・・・・

まぁ、一応は公爵夫人としての体裁は整えないと、敵国に付け込まれる可能性があるからだと思うけど。

あのバカ(公爵)の考えなしの所為で、周りが振り回されてるっての!

でもまぁ、ほとんど砦に詰めてるって言ってたし、案外朝早くにはもう出立してるかもね。

家庭内別居に賛同してたし、顔を合わせる事もないでしょ。


ウトウトしながらも、そんな事を考えながら眠りについたファラトゥール。

明日にはこの屋敷にはいないのではと思われているセレムはというと、ファラトゥールとの会話によって自分がいかに意固地で子供の我儘のように駄々をこねていたのかを、今更ながら突きつけられて羞恥に身もだえていた。もっと他に、穏便に済ませる言い方や案があったのではと。本当に、今更である。

そしてファラトゥールの予想通り、逃げる様に早朝、砦へと出立したのだった。


翌朝、清々しい気持ちで目覚めたファラトゥール。

身の回りの世話をてくれる使用人達は皆、驚くほど友好的で何か裏があるのではと、思わず疑ってしまうほど。

だが、よくよく話を聞けば、主でもあるセレムはほとんど砦に詰めている為、事実上屋敷の維持くらいしか仕事がなく、いまひとつやりがいが無かったと嘆いていた。


お屋敷の維持だって立派な仕事だと思うけどなぁ・・・


だが、使用人達は主のお世話をしたかった。

女主人をキラッキラに着飾らせたかったのだ。

ファラトゥールも自国から専属の侍女ライラを連れてきていた。連れてきていたが、元々ファラトゥールは着飾る事を好まず、少なからずライラも不満を持っていた。

その所為か、公爵邸の使用人達と意気投合。あっという間に溶け込みタッグを組んでいたのだから、ファラトゥールすら驚くほどの適応能力である。


「ファラ様、セレム様はファラ様の予想通り、早朝砦に発たれたようですよ」

ライラはセイリオス国に居た時は、二人きりの時にだけファラトゥールをファラと呼んでいた。

だが今では、邸内では誰も彼もが「ファラ様」と呼んでくれている。

というのも、この公爵家に勤めている使用人達の前で「奥様とは呼ばず、ファラと呼んでくれ」と宣言しからだ。

本人ですら「長げー名前だな!」と思っていたし、もう、王女ではないのだからそのくらいはいいだろうと。


奥様なんて呼ばれたら、鳥肌しか立たないわ・・・・


ファラトゥール自身、妻になった気がさらさらないので、名前で呼んで欲しかった。その方が、周りの人達との距離も近く感じたから。

いずれ離婚するとはいえ、ここに居る間はいがみ合うより仲良くしたい。


まぁ、公爵夫人のお仕事には手を出すつもりはないけどね。


そんなファラトゥールの気持ちなどお構いなしに、使用人達は自らファラトゥールと関り、着々と公爵夫人へと仕立て上げようとするのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る