第5話

五百年前、取りつかれた様に様々な魔法を生み出していたファーラは、人々から大魔法使いや大魔女と呼ばれ崇められていた。

不可侵の森は、自分の研究を誰にも邪魔されない為と、研究内容を盗まれない為の結界のようなものだった。

ファーラは尊敬されてもいたが、妬みを向けられる存在でもあったのだ。


結界と言っても、許可された人間だけは入れるようにしていたんだけどね。

許可していたのは、二人だけだけど。


兎に角ファーラと接触しようと、森に入ってくる者が多かったのだ。

特に悪意がある者が多く、そんな輩は問答無用で二度と目の前に現れない様、無人島へ転移させるよう仕掛けていた。

興味本位のみで入った者達は、森の入口へと出る様になっている。それらは今も健在だ。


まさか、私が死んでからあの森に道を作れるくらい魔力がある魔法使いがいたとは・・・・全く、余計な事を・・・


そう。本来は許可された人間だけが入れたファーラの実験場。

それが、セイリオス国とアトラス国、グルリア国へとそれぞれ、森を抜ける道が一本ずつ伸びてしまっていたのだ。

森全体の結界は解けないが、大体人ひとり通れるくらいの結界が解除されてしまっている。


相当、腕に覚えがある魔法使いが頑張ったんだろうけど・・・・

まぁ、道を三本も作れたって事は、そこそこだったって事よね。でも、余計な事を!私の土地なのに・・・


道ができてしまったことによって人々が移り住み、国ができてしまった。

そして、その道を使って他国を侵略しようとしている。

だけれど、道がそれぞれの国に向かって一本ずつなので、撃退は簡単だ。

そんな不利な状況下、当然ながら森からの侵攻はやはり厳しいと、何やらきな臭い動きをしているらしい。

だからこその、政略結婚だったのに・・・・


あのバカ(公爵)、いつまでも正面からしか攻めてこないと思ってんのかしらね?

森側を囮に、山脈側から攻めてくる可能性だってあるのに。そっち側は手付かずなんだよね。二国共。


此度の結婚で、三国顔を合わせた時にアトラス国、グルリア国には、それとなく忠告はしていた。

山脈側からの侵攻もあるのでは・・・と。

だが、その言葉に懐疑的な二国の王達。

気持ちはわかる。あまりに険しい山岳地帯に山を越えるまでに何人命を落としたか。

だが、道はないわけではないのだ。


まぁ、その険しい道もすぐには通れるわけじゃないから、まだ猶予があるけど・・・

その前に何とかしたいわ。

それには、ガルーラ国の正確な内情の把握と、私の魔法の精度の確認よね。


ガルーラ国の内情は正直な所、三国ともあまり正確な情報を把握できていない。

というのも、道が一本ずつしかない。当然、警備も厳しいし、入出国審査にはかなりの時間がかかる。

その所為で間諜を送るにも一苦労だ。よって、今現在の国の内情を正確には把握できないでいた。お互いにだが。

国王には王子と王女が一人ずついる事はわかっているが、どういう人物なのかも知られていない。


そしてファラトゥールの魔法。

前世の記憶が甦ったおかげか、五百年前には思いもつかなかったアイデアが泉のごとく沸き上がってくる。

特に試したいのが、空間収納魔法と飛行魔法。

その他にも試したいものが沢山あるが、使える魔法に少し手を加えるだけで精度が上がりそうな魔法も沢山あった。

それらは追々試せばいい。まずは目から鱗だった空間収納魔法と飛行魔法。前世の人達の想像力には脱帽する。


空の旅ってロマンよね~。それに真っ直ぐ飛べば一気に行けるじゃない。便利よね。


実は転移魔法も使えるのだが、箒に乗って空を飛ぶアニメが大好きだった前世のファラトゥール。これだけは絶対に外せない魔法なのだ。

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