第19話 アレな人たち
ダンジョン19日目 ダンジョン執務室 仲間 ノーラ婆さん、バンパイアギャル
(ミスティ)、角モグラ×2、擬態スライム、水の妖精
俺のダンジョンには、アレな人たちが多く入ってくる。
今日はクリュティエに案内され、一人の裕福そうな冒険者が執務室に入ってきた。
「プロデューサーさん、お話があります!」
俺はねえよ!
つか、そもそもダンジョンマスターの俺に面会?
一応、敵の親玉なんだけど。
「クリュティエさんですが、こんな小さな箱で収まる才能ではありません。もっと大きな箱、たとえば2000人を収容できる円形劇場で歌わせたいんです」
あのさ……、君、根本的に間違ってるよ。
君は冒険者、クリュティエは一応モンスターだからね。
「そんな立場なんて、関係ないです! 彼女の才能を埋もれさせるつもりですか!!」
こいつ、ベクトルが変な方へ振り切ってやがる。
溜息をつきながら断ろうとする俺の前に、クリュティエが参戦してくる。
「マスター。お願いです。マスターへの愛をもっと大きな場所で歌いたいんです。私からもお願いします」
二人で一緒に深々と頭を下げている。
こいつ、何様だよ!
本来の仕事をしろよ、仕事を!
こいつが活躍するたびに、大きなお友だちが増えるだけじゃねえか。
「すまないけど、俺たちはこのダンジョンから出られない。出た時には連絡するよ」
敵の親玉に何を言わせるんだ……。
それでも、この男は諦めない。
「冒険者ギレンの意地にかけて、クリュティエさんを大きな世界へ連れていきたいと思います!」
ああ、こいつ、いっちゃってるな。
まあ、好きにしたらいい。
俺は忙しいからな。
好きにしたらいいの一言を聞くと、ギレンは立ち去っていった。
……疲れた。
§
次の日、ギレンは俺にこれでもかとばかりに本気を見せつけた。
ギレンは執務室に入ってくるなり、
「ダンジョンマスター……。いえ、ダイスケさんでしたね。このダンジョンがオススメですよ」
と、机の上に地図を広げる。
何だ?
「嫌だなあ。クリュティエさんの野外コンサートのために、ダンジョンアタックの候補地を見つけてきたんですよ」
はあ? そこまでするのか?
たまたま横にいたご用商人のゼニスに確認してみる。
「ふむ、いいかもしれません。でも、こんないいダンジョンをどうやって見つけたんですか? かなり近い場所にありますね」
「それは秘密です」
ふむ。少しきな臭い。
でも、確かに楽そうなダンジョンだ。
ギレンは懐からお札を出し、机の上にそっと置く。
俺はそれを眺め、感謝の意を述べる。
「早速使わせてもらうよ」
「分かりました。ちなみに突入は何日後ですか?」
「3日後だ」
「では、コンサートの準備をして待っております」
ギレンはクリュティエに挨拶をすると、すぐに執務室から出て行った。
少し時間をおき、ゼニスを近くに呼ぶ。
「ゼニス。あの男の素性は?」
「はい。近くの町タナランで興行を仕切っている男ですね。別にマフィアとの繋がりはないようです」
ゼニス、できる男だ。
昨日依頼して、この情報を得るとは。
「ちなみにこのダンジョンがある山は名称があるのか?」
「もちろん。ヘサマード丘陵といいます」
ダンジョン脱出を既定路線として、この辺りの地理も詳しくなっておいたほうがいいな。
「ゼニス。この周辺の地図を買いたいんだが」
「分かりました。明日、お持ちします」
3日後のダンジョンアタックに備えて、いろいろと準備が必要だな。
§
ダンジョン21日目 ダンジョン執務室 仲間 ノーラ婆さん、バンパイアギャル
(ミスティ)、擬態スライム、水の妖精
「マスターに話しておきたいんじゃが」
翌日、執務室にノーラ婆さんと俺だけになる時間があり、ノーラ婆さんは珍しく提案をしてきた。
「そろそろ強いモンスターが増えてきたから、弱いモンスターは自由に動いてもらったほうがええ。管理しきれなくなるからの」
確かに、そうかもしれない。
最近は、モグラやコウモリ以外を見かけて、びっくりしてしまう。
「ノーラ婆さん、このダンジョンで強いモンスターは誰だ?」
「そうだねえ。まず、このダンジョンで一番強いのはミスティでA級モンスター、二番目はクリュティエちゃんでB級モンスターとなってるね」
「ステータスでは見られないけど?」
「レベルが上がれば見えるよ。ちなみにバンパイアバットはC級、角モグラや洞窟コウモリはD級だね」
「へえ。じゃあ、B級以上のモンスターを管理すればいいかな。確かB級って話せるんだよね」
ノーラ婆さんは軽く頷く。
「思い通りに動かせるのはB級からかもねえ」
「ちなみにノーラ婆さんは何級?」
「わしもB級じゃ」
とりあえず、その3人の現在のステータスを確認する。
バンパイア 体力43 力強さ1(8) 魔法0 技量(攻)12(22)/24 (防)11/24
ギャル 特殊攻撃 魔眼(相手を意のままに操る) 18/24
変身(コウモリに変身できる) 24/24
※特記事項有り
水の妖精 体力35 力強さ2 魔法7 技量(攻)10/24 (防)9/24
習得魔法 泉24/24 水球24/24 水癒20/24 催眠の歌声16/24
※特記事項有り
召喚師 体力21 力強さ1 魔法3 技量(攻)3/24 (防)4/24
習得魔法 召喚レベル1 火球20/24
「ノーラ婆さん! 魔法、覚えてるよ!」
「ほう。後方から魔法攻撃ができるのう」
これは心強いぞ!
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