第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト俳句の部「死季折々」

尾岡れき@猫部

春の灯に 耳鳴り止まぬ 癌告知

春のに 耳鳴り止まぬ 癌告知



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【とある癌患者さんの手記】


毎年、春灯籠を楽しみにしていたよね?

桜の花弁が散って。

灯籠の光とあいまって。

本当に綺麗で。


貴方、ここでプロポーズしてくれたよね?


でも、今は一切

言葉が届かない。


乳がん

骨、肺、リンパ節転移

ステージⅣ。

違和感を感じた時には手遅れ。進行はあまりに、早かった。


先生は専門用語で、何やら言うけれど。全然、頭に入ってこない。


今も、耳鳴りのように頭の中でそんな言葉が繰り返されて。


どうして良いのか分からなくて――貴方の指が小刻みに震えるのを感じながら。


春灯籠に照らされ、無言で歩いた。




※季語は「春の灯」でした。


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