現代兵器が出せず無能と追放された俺。未来兵器を出して無双する。

ねくろん@カクヨム

序章

始まりはいつも突然に


「ね~、何かしらこれ?」


 青筋を立てた美少女が指さしたのは、俺の手にある銀色のピストルだ。

 ピストルはシンプルで可愛らしいシルエットをしている。

 一応武器の形をしているが、とても人を傷つけるモノには見えない。


 これはどうみても――


「……オモチャ?」


「このチ◯カスがぁ!!!」


「ヒィィィ?!」



◆◇◆



 俺はついさっきまで、日本の高校に通う一般的な高校生だった。

 だが、電車に乗って通学中、とんでもない異変がおきた。

 線路上に巨大な光の門が現れ、俺の乗っていた電車を飲み込んだのだ。


 目覚めた瞬間、電車の乗客は全員巨大な魔法陣の中にいた。


 すわ、異世界転移?! そう思った俺だが、どうも様子がおかしい。

 異世界にしては……〝文明が進みすぎている〟。


 魔法陣は武装した兵士に囲まれていた。

 金髪碧眼きんぱつへきがんの兵士はヘルメットを被り、手にはアサルトライフル。


 俺は最初、彼らのことをロシアかアメリカの兵隊かと思った。

 だがそれは違った。

 ロシアにも、アメリカにも、王女様なんていないからだ。


 乗客たちの前に現れ、王女を名乗った絶世の美少女。

 彼女はうるんだ瞳でこう訴えた。


彼方かなたの勇士たちよ、あなた達に魔国まこくを討伐して頂きたいのです!」


 勇士たち。つまり、電車に乗り合わせた乗客たち全員だ。

 その反応は様々。


「まじかよ!」「飯はまだかのう…」「会議の時間が!」


 異世界の存在に驚き、わき立つもの。日常に帰ろうとするもの。

 さっぱり状況つかめていないもの……様々だった。


 ちなみに俺は、すみっこで小さくガッツポーズしていた。

 こんなラノベやアニメそのままの展開が自分に起きるなんて。

 感動で理性が完全に吹っ飛んでいたのだ。

 

「これから勇士の力を確認していきます。こちらへ――」


 王女の合図によって武装した兵士たちが動いた。

 乗客たちを並ばせ、ひとりづつ司祭みたいなオジサンのところへ向かわせる。


「貴方がたには、この世界に来たと同時に特別な力が備わっています。今からそれを確認していきます。どうか落ち着いて――」


 最初の一人、オタクっぽい小太りのおじさんは手から電撃でんげきを放った。

 その次、ヨボヨボのおばあさんは手に持った杖で重そうな銅像を浮かす。


 王女が言ったように、乗客は本当に特別な力、スキルを手に入れていた。


 おじさんは「電撃魔法」。おばあさんは「重力魔法」のスキルらしい。


 自分はどんなスキルがもらえるんだろう。

 ワクワクしながら待っていると、ついに自分の番が来た。


「よろしくお願いします!!」


「ふ~む、鑑定かんてい、ステータスオープンっと……チミのスキルは~」


 どきどき……!


 オジサンが〝鑑定〟とやらをすると、ステータスウィンドウが出てきた。


 七色にキラキラと輝くウィンドウ。

 そこには『ジロー・デガワ レベル1 創造魔法そうぞうまほう』と書かれていた。


 うむ。アタリなのかハズレなのか、まるで意味がわからん。

 俺が首をかしげていると、目の前のおじさんの顔が真っ青になった。ん?


「王女様、出ました! 激レアの創造そうぞう魔法です!!!」


「そーぞーまほー?」


「ッシャァァァ!!! でかしたぁッ!!」


「?!」


 王女様のキャラがいきなり変わった。

 いや、王女だけではない。周囲の兵士たちも含め、空気が変わる。

 武装した兵士に2重3重に囲まれてしまった。


「あ、あの……創造魔法って?」


「創造魔法はこの世界を大きく変えた、英雄と同じ魔法です! 兵士たちの武器をはじめ、この世界のありとあらゆるモノを変革した魔法ですわ!!」


「世界を変革? そ、そんなすごいのコレ?」


「さぁ勇者様! 創造魔法を使ってみてください!!」


 王女は露骨ろこつに体を近づけ、俺の腕に手をからませる。

 あらやだ! お胸が当たってますわよ!

 ぐふふ、しょうがないにゃぁ……使ってあげるかぁ~!


「さ、スキルを選んで実行して♡」


「おっ、おぉ……はい!!」


 王女さまの手取り足取りのお色気チュートリアルが始まった。

 俺の手を取る王女の手はめっちゃやわらかい。このままムフフ展開もあるのでは?

 異世界ハーレムも好きだけど、王女様一途いちずもわるくない。うむ。


 えーと、スキルを選択すると色々出てきたぞ。

 なになに……?


・クリエイト・ウェポン LV1

・クリエイト・アーマー LV1

・クリエイト・フード  LV1

・クリエイト・ドラッグ LV1


 おお、なんか武器防具と食べ物を出せる感じか。

 しかし最後が不穏なんだが?

 ドラッグってお薬だよね? イケナイお薬じゃないよね?


 ま、まぁ、ここは武器でも出すか。

 武器が嫌いな男の子なんていませんよ!


「創造魔法……クリエイト・ウェポン!」


 俺は頭の中にピストルをイメージして魔法を使う。

 すると、右手に光が集まり、次第に何かの形をとっていく。


「……!」


「こ、これは……!」


「ね~、何かしらこれ?」


 青筋を立てた王女が、俺の手の中にあるものを指さした。


 ――銀色でL字型をしたピストル……のようなもの。

 それはシンプルで丸っこく、可愛らしいシルエットをしていた。


 武器というものは、見るだけで何か危険な感じがするものだ。

 尖ってたり、ゴツかったり、禍々しかったり。

 荒涼とした廃墟はいきょや砂漠、薄暗い武器庫の似合うナイスガイ。それが武器だ。


 しかし、俺の手の中にあるピストルは違う。

 子供に愛されるのを目的としたような、ノスタルジックな安心感を感じる。

 丸く、軽く、キラキラしていてかわいらしい妖精ようせいさん。


 なんていうかアレだ。

 ファミリーレストランのレジ横のコーナーに並んでそう。


 ためしに引き金を引くと先端が光り、楽しげな音を発した。

 えーと、これはつまり……。


「……オモチャ?」


「チッ、このチ◯カスがぁ!!!」


「ヒィィィ?!」



◆◇◆



 なんやかんやあって、俺は即日追放が決まった。

 判断が速すぎない?


 戦いに使えないスキルを持っている人たちは、俺の他にも何人かいた。

 鍛冶かじとか、何でも入るアイテムボックスを出すとか……そういうのだ。


 しかし、そうしたスキルも後方支援や街での仕事に役立つ。

 俺のように何の役にも立たないゴミスキルじゃない。


 悲しかな、追放は当然といってもいいだろう。

 追放されたのは俺一人だ。

 たぶん見せしめの意味もあるんだろうなー。


「……これからどうしよう。」


 城を追い出された俺は、城門の近くにあった木の下にすわっていた。

 門番の視線が痛い。


 一応、追放のときに1週間の生活費として銀貨10枚をもらっている。


 しかし、使い切ってしまえばそれで終わり。

 せっかく異世界まで来たのに、のたれ死にエンドはいやだ。


「とりあえず、街に行くしかないかぁ……お前のせいだからな?」


 俺は銀色のピストルに怒りをぶつけた。

 当然、オモチャが俺の声に答えるわけもない。

 ピストルをズボンのポケットに入れ、城下町に向かって歩き出した。




――――――

※作者コメント※

ここまで読んで頂きありがとうございます!

「こういうのでいいんだよ」という昔かたぎの異世界転移を目指しています。

面白い、続きが気になる! と思われたら是非ブックマークと評価の程を…

作者のモチベがあがり、更新が加速するとの噂でございますよ!


追伸:20万PV達成ありがとうございます。ウォォ!!

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