5月某日



休みの日の朝。

前夜のあなたからの夜のお誘いは

あなたの睡魔に掻き消された。



私にとっては大きな愛情表現。

滅多にないあなたからの誘い。


でもわかってた、

きっとまた何も無く

触れられることも無く

あなたは朝起きて実家に帰る。


いつもそう。

待って終わる。


またいつもの喧嘩と話し合いの朝だ。


そう思ってた。


朝、私の足元にガラスコップが飛んできた。

粉々に割れた。

怒号が背中から聞こえた。


右腕を引っ張られて振り向いた。

初めて浴びた〝てめぇ〟という言葉。


左肩を掴まれてベッドに突き飛ばされた。

割と華奢な私の肩は、

あなたの手の力で砕けそうだった。


首の筋から高い音がした。

馬乗りに近い体制で続く怒鳴り声。


足首がピリピリしてた。

きっとガラスで切れたんだ。



痛い、全部痛い。

体より心臓が痛い。


ねぇほんとにあなたですか、


脱衣所で1人体をさすって泣く私を放って

窓際で電子タバコを吸うのは

本当にあなたですか、



夢であって欲しい、

何も覚えてないと言い聞かせれば

全部無くなるかもしれない、


少し冷静になったあなたは

ガラスの破片を片付けて

ただただ私を押さえつけるくらいの強さで

いつになく抱きしめてた。



もう戻れないね、

あなたもきっと絶望しただろう、

離れなきゃいけない、

好きすぎて、愛せなくなった

お互いに何も、信じてあげられなくなった、



いつからこうなってしまったのか、

1年前の出会いは、

一目見た私たちは

こんなんじゃなかった、



何度となく繰り返してきた

同じような喧嘩。

月1の恒例のような私の不安から始まる大喧嘩は

お互いを疲弊させてた。


離れるってなるといつも

お互い握った手が離せないほど、

涙が止まらないほど

離れたくないと思うのに。



さようなら、

元気でね、

だいすきよ、

愛してるよ、

体に気をつけてね、

愛してるよ、



何度も何度も言った。

あなたは辛そうに泣くけど

何も愛らしき言葉は伝えてくれなかった。


何度となく訪れたこんな展開。

初めて本当に、終わった日。


今、何してますか、

私と離れて、清々してますか。

思うことは毎日たくさんあるけれど、

今でもあなたが大切です。

心から好きで、会いたいと思う。



とりあえずただ体に残る痛みの感覚が

なかなか消えてくれなくて、

また私は同じ方法を取る。

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