第3話『地下世界に行かせたい理由 パート2』


「おい! どうして、そんな重要な事、話してくれなかったんだ!」

「ごめんなさい。もっと早くに伝えるべきだったわね」

「ごめんね、マスター」

 二人とも、申し訳そうに謝罪しゃざいする。


「とはいっても、またキャラ1000連ガチャとかしないかぎり、大丈夫よ」

 サラは俺の両肩りょうかたつかみ、あわてて、言いわけする。

「そうそう、まだ余裕よゆう

 ビナもあわてて俺のうでを掴む。


「そうは言っても……」

 うつわが壊れたら、死んじゃうんじゃないか?

 そうしたら、俺はこの世からログアウトじゃないか!


「わたしも、眷属けんぞく調しらべさせてはいるんだけど、かんばしくないわ」

「そうなの、ぼくも方法、探してたの」


 二人とも、裏で、いろいろと方法を探してくれてたんだな。

 確かに、そんな話を聞いたら、ショックで半年くらい落ち込んでいただろう。


「そっか、俺のために……」

 ビナが顔を上げ、俺の腕を強く掴む。

「だから、魔王になるべき。もしならないなら、ぼく達を捨てるべきだよ」

 とんでもない爆弾発言ばくだんはつげんである!


「そんなのはダメだ!!」

 いや、それは絶対、ありえない。せっかく、サラやビナ達に出会い、今まで頑張ってきたんだ。仲間達を捨てるという選択肢は、俺にはない。


「特に、大半は私のせいよ。UR(ウルトラレア)キャラである私は、あなたに大きな負担ふたんをかけているの」

 サラは子犬のように小さくなり、瞳をうるませている。


「サラ……」


「わたしもだよ~」

 ビナも小さくなる。


 サラとビナは今にも、泣き出しそうだった。

 俺はもらい泣きしそうだったが、こらえる。俺はサラとビナの手をにぎる。


「魔王になれば、俺の器とやらが大きくなり、サラ達を捨てずにすむんだな?」

「うん! そうだよ~!」

 ビナは涙をこらえ、笑顔で応答おうとう


「だったら、俺は魔王になるよ」


 サラは驚き、目をぎゅっとつむった後、目を開き、真剣しんけん眼差まなざしで俺を見る。


「空音」

「ん?」

「魔王になれば、普通の生活、平和な生活が送れなくなるかもしれない。それでも、空音は魔王になる覚悟かくごはある?」

 サラはそう言いながら、ボロボロ、涙を流す。


 ビナとサラの手を離す。

 サラの瞳も頬も涙で濡れている。

 俺は彼女の涙を手で拭う。

 ビナにも同じ事をする。


「ある。お前達を捨てるぐらいなら、魔王でも悪魔にだってなるさ」

 俺は笑顔で答える。

 そう、俺はキャラ達の主(マスター)だ。キャラを捨てる選択肢せんたくしはないのだ。


「空音……」

「マスター……」


 二人とも瞳をウルウルさせ。

「空音~!!」

「マスター!!」


 サラは前から、ビナは後ろから抱きしめる。

 二人に抱きしめられ、俺は幸せな気持ちになった。


「わたしは一生、あなたについていくわよ!」

「マスターと、ずっと一緒だよ~!」

「ハハハ、二人とも、心配してくれて、ありがとな!」

 俺は、決心けっしんする。


 俺達は立ち上がり。

「よし、俺は魔王になる!! 強くて大きい器になれるようにな!!」

「わたしもぜひ、手伝うわ!」

「わたしも~!」


「「「えい、えい、おー!!」」」


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