第2話『水の精霊ウンディーネ』


 俺はハッとし、机に置いてある『スマートフォン型グリモワール』である『スマグリ』を手に取る。


「転送!」

『スマグリ』から女子が出てくる。


 床にストンと着地。


 俺の長年の相棒あいぼうである水の精霊ウンディーネのウネちゃんである。水色の髪を高い位置で2つたばねている。いわゆるツインテール。

 見た目も中身も15歳くらい。美人で可愛い女子。

 白いTシャツとジーパンを見事に着こなしている。


「こちらは、水の精霊ウンディーネだ」

「ウネちゃんだよ!」

 ウネちゃんはウインクしながら、てへぺろポーズをとる。


「ウネちゃん。こちらが忠義の守護光聖竜しゅごこうせいりゅう『セイラ・シュバイアー』のセイラだ」


「わたしはセイラです。気軽にセイラと呼び捨てにしてください」

 セイラはお辞儀する。


「ウンディーネだよ! だから、ウネちゃん……じゃなくて、ウネ先輩って呼んでね!」


「ウネ先輩ですね!!」


 ウネちゃんは『先輩』と呼ばれて嬉しかったのか、目がキラキラしている。俺の視線で我に返り、コホンと咳をする。


「うん! だから、ワタシは先輩だからね。ど~んっと頼ってよ!」


 ウネちゃんは腰に右手をあて、左手で自分の胸をポンと叩く。


「はい、ウネ先輩!」


 セイラは尊敬そんけい眼差まなざしでウネちゃんを見つめる。ウネちゃんは嬉しそうだ。

 俺は思わず吹き出し。


「おいおい、ウネちゃん。セイラはSSR(スーパースペシャルレア)のキャラなんだぞ? ウネちゃんより強いのに。先輩扱いされていいのかよ」


 ウネちゃんはほほふくらませ、俺をジロリとにらむ。


「いいの、いいの! ワタシより強い後輩がいてもいいの! ワタシは後輩が欲しくてたまらなかったんだから!」


「そうなのか?」


「仲間が増えて嬉しいし、寂しくないし、ワイワイできるじゃない!」

 ウネちゃんは手をパタパタさせながら、笑顔で答える。


「そうだな」


 ウネちゃんは少し、真面目まじめな表情になり。


「それに、空音が強くなる事ができる。だったら、大歓迎だいかんげいに決まってるじゃない!」


 そこまで、俺の事を考えてくれていたのか。


「ウネちゃん……」


「あれ? 泣く? 泣く? 感動した?」

 ウネちゃんはニヤニヤし始める。


 何だよ、俺をからかっているのか!?


「別に泣かないよ!」


 感動はしたけどな。


 セイラの方を見ると、感動したのか涙を流していた。


「セイラ、泣かなくていいんだぞ?」


「素晴らしかったのでつい……」


 彼女は手で涙をぬぐう。俺は、ポケットからハンカチを取り出す。


「はい、ハンカチ」

「いいんですか?」

「いいんだよ」


 彼女にハンカチを渡すと、セイラはさらに感動したのかボロボロ、涙を流した。


「ありがとうごじゃいましゅ!!」


 俺は思わず吹き出してしまった。

 セイラって、良い奴なのかもしれないな。


 お互い、自己紹介を終え、家族にも紹介した。

 妹の花純(かすみ)は新しいお姉さんが増えたと言って、喜んでいたし、お母さんも娘ができたと、大歓喜だいかんぎ。その日は、歓迎かんげいのパーティーが開かれ、セイラは喜びの涙を流したのである。

 

 こうして俺は新たな仲間ができたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る