「白い足音。」~10代から20代に書いた詩

天川裕司

「白い足音。」~10代から20代に書いた詩

「アル・パチーノのような男。」

イタリアの街をコートで身をくるみながら歩いていた。

向こうから来る女に目をやりながら男は、少し灯りの

もれる窓を気にした。空の雲ゆきはあやしくなり、雨が

降り出しそうだった。女は、その男の横を通り過ぎ、何く

わぬ顔で歩き去った。男は、プライドの持ち主で、コイン

片手に酒場に入るのだ。ふらりふらりとルーレットは回っていて

、嫌気がさすような人の多さとタバコの煙に、酒のびんは見えない

程だった。“外国の街”をいろいろ考えていたが、結局、そこ、今

いるところのことしか考えられなくなった。男はさっきの女の

ことも忘れて、ただゲームに夢中だった。ルーレットは、さっき

よりも早く回り出し、客入りもよくなってきている。それは次第と

よくなる、だんだんと増えていってるのだ。バーボン一杯で酔いが

回り始めた、外国の酒に慣れていない男は、タバコの煙も吸わない

まま、眠りに堕ちた。さっきからにぎっているコインを使う間も

ないまま、うつらうつらする時、少し“どうしようか”迷っていた。

このままでいいのだろうか。何も遊ばなくても、今夜このまま終らせて

しまっても..  明日になれば、また考え方がかわっている。人間とは、

いい加減なもので、さっき言いかけたことも忘れる。頭の回転が遅い

んじゃない、口の回転が早くないのだ。そして、結局、コインをにぎり

しめたまま、睡魔に堕ちてゆく男はその瞬間、“あの男はアル・パチーノに似た男だ.”

と呟き、眠った。その夜は急に気忙わしくなり、そこの主人も早く店を

閉めたいらしく、そのアル・パチノに似た男の話し相手になったまま、

カーテンを閉めた。タバコの煙は、だんだん薄くなった。


「★」

 単純な世界だね。ここは。


「白い足音。」

雪山を何千K(㌔)も歩き続けて、ロシアに入った。そこにはアメリカ人とイギリス人がいて、フルシチョフ氏とレーガン氏が同じ空を見ながら語り合っているのだ。私はそこで“警察”になり、その人達の話を黙って聞いていた。人類の清算、戦争、天災など、いろいろな困難に立ち向かっているその時、神はまだ沈黙を続けておられた。かたや、祈る者、また、独裁する者、家族とともにいる者、様々な人種がいた。そこは寒い地方で、ラジオの電波さえとだえてしまう程だった。本当か嘘かわからない、人間(ひと)の言葉(情報)を聞くしかないその時は、人のいやらしさ(不安)も浮かぶ。誰かを罪人にまつり上げて、神に冒涜するのである。まるで、どこかで見た風景だ。普段おとなしく、貴品と少しの孤独と、遠慮さを保ってはいるが、こういう時は本性にすがるものである。人間(ひと)の本性とは、神がお創りになられたものか?…細かいことはわからない、ただ明日、この寒期で、食糧がない様子だ。ここでも当然人間の本性は浮き出てくるだろう。そこで、私の横にいた輩は言う。“ああ、本当だったら今頃、テレビで面白い番組やってるのになぁ…。”窓の外では、ずっと足音が響く。そして、外の人達でさえ、我々と同じ人間なのである。


「★」

もう飽きたか。飽きが早い世界だ。いつもながらに驚かされるよ。


「ヒッチコック.名作劇場。」

~黒い水面~

むかーしむかし、あるほとりに、ひとりの少女が住んでいました。

みごとな屋敷の一人娘のその少女は、そこに一人で住んでいました。

そしてそこには、その屋敷のすぐ裏に、池があったのです。

その少女は、暇をもてあましては、その池に小石をたくさん持っていって

その水面に向かって石を投げて遊んでいたのです。ずっと毎日々水面に

小石を投げていました。その池のまわりには石などはなかったので、なくな

ったら、遠くまで取りにいかなければなりませんでした。だから、たいてい、

手持ちの石が尽きれば、そこでやめるのです。でも、その日は暇ながらにとても

いい気分だったので、急いでまた屋敷の前庭まで戻って小石を拾い、またすぐ

うらまで持って行って、池に投げようとしました。そうしていつものようにまた

投げ始めました。そうする内に、いつの日か、新しいアイディアを思いつき、いつもより

近くに行って小石を投げようと思いました。近くまで行って、石を投げたあと、その

水面を見ると、自分の顔が、波紋でグニャグニャにゆがんで映っていました。彼女は

また新しいアイディアを思いつき、その顔の映った水面に飛び込み、死にました。

下には今まで積み上げてあった小石が、上まで来ていたのです。


「信仰。」

光か闇か、どっちも光に見えて、闇に見えるのです。


動画はこちら(^^♪

【白い流行】

https://www.youtube.com/watch?v=3iUDAz918VE

【暗黙のクリスチャン】

https://www.youtube.com/watch?v=3iUDAz918VE

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「白い足音。」~10代から20代に書いた詩 天川裕司 @tenkawayuji

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