第7話 美醜の痛み
「魔神族は2つの核があり、それを壊さないと倒れない、というか復活するのよ…600年前に多くの魔神族が守護者”ガルディ”によって倒されたけど、それは1つめの核…2つめの核は時間経過とともに創られるの」
「死にはしないけど大幅な弱体化があるってことでしょー?それなら勝てるじゃん」
魔獣と戦いながら、クレオパトラと話して、クレオパトラの隙を狙う。飛行タイプだったり、土にもぐったり、と様々な攻撃が飛び交うが良元には通用しない。
良元は風に変化する、そして風とは揮発性を表すため環境に適応できる。つまり、あらゆる攻撃の受け流しに長けた能力である。
(さすがにキッッッツツツツィ!
ヒュドラも”演説”で動かしたんなら、こっちもクレオパトラの言葉に乗らないようにしないといけない…おっ)
良元が風の変化を解くと、待ってましたと言わんばかりに魔獣が良元に攻撃をいれようとする。
ヒュン!
どこからの攻撃か分からないまま、魔獣は倒れた。魔獣の体には穴が一つしか空いていないのに、急所を狙って倒した。
「…」
クレオパトラは魔獣を下がらせて状況を見る。しかし、その間にも魔獣の数は減っている。
「あんた、なんでこんな戦場でドレスなんて着てんの?正直、殺しづらいんだけど~」
「私は戦闘皆無の元祖だからね、美しくないと見向きもされないのよ?醜女と美女だったら、美女に人が寄ってくるように…私が美しくないことには誰も耳を貸さないのよ」
そう言ってクレオパトラはヒュドラの毒の塗ってある短剣を取り出す。
(ボクの武器が超近距離だってことを理解してる、そして、クレオパトラから2m以内にいていい時間は約2秒…じゃなきゃ、毒が一瞬で回ってぱー、当然あっちも抵抗はしてくるから一回で仕留めるしかない…なにか隙さえあればな)
「美しいなら人々を操ることだっていいじゃない」
クレオパトラの言葉に、少し俯いて、
「美しいことを、免罪符にするのはどうかと思うよ…ねえ!そう思うでしょ?ノーヴァさん!」
ノーヴァという言葉に反応してクレオパトラは振り返る。その隙にクレオパトラの間合いに入り、喉を切った。何か言おうとしていたが、すぐに息絶えた。ヒュドラの短剣に解毒剤を何本もぶっかけて回収できるようにする。
(魔獣は兼平がぜーんぶ!やってくれたね…)
周りを見渡すと、大量の魔獣とクレオパトラの死体のみ。合流するために良元はそこから去った。
「せめて、一度でも嘘をついてくれないと…殺しにくいんだよ」
「なあ…俺が聞くのもなんだが…ほんとにこのやり方でよかったのか?」
ツァン高原の広場、噴水に腰かけるノーヴァが群衆を率いてきた兼平に確認する。
「?眠らせるほかないだろう?」
何をバカなことを言ってるんだという眼差しを向けられた。大量の群衆に痛みを与えることで眠りについた。
(一週間寝ずにいた弟の’眠たい’という痛みを持っていたのが幸いだが…まさかこんな使い方をするなんてな~)
「遠隔の攻撃か?」
ノーヴァの横で手を動かしている兼平に聞く。
「私は水を司る鷹司だ、まあ…水そのものではなく大気にある水、即ち水蒸気を操る…水蒸気の温度を下がらせ、液体として攻撃をする…」
「小規模だな」
「小さいからこそ威力が増す、それに繊細な動きも再現することができる…アイツとの連携はそっちのほうが強いんだ」
すぅと息を整えて、高くジャンプして巨大なヒュドラの頭を斬る。ヒュドラの首は硬く、神器でないと斬ることはできないとされている。しかし、基実には関係ない!
“火”は古代から神聖なものとして存在し続けている,近衛家当主が生まれた瞬間に刻まれた”巫覡”、気を霊魂にして霊魂を使う聖なる力”巫術”、この能力が神器のようなものなのだ。
“蒼い炎”と”紅い炎”を身に纏う。基実の炎は色によって特性に変化が出る。最も威力の高い”蒼い炎”と汎用性の高い”紅い炎”を組み合わせる。
巫かんなぎの提灯
ヒュドラの毒を”紅い炎”で包み防ぐ。それとともに広範囲に炎が広がっていることにより、”蒼い炎”の威力と速度が格段にアップした。
ギャキキィィーン!!
頭が回復する前に、すべての頭を切り落として、胴体を真っ二つにした。普通ならば、苦しみの悲鳴をヒュドラはあげているのだろうが、頭を切り落としたので声がでない。
たくさんの家があったはずの場所は、ヒュドラの毒によって溶けてしまい、なにも残っていない。暴動を起こした民衆はここら一帯に住む人々だと分かっているので怪我は心配しなくてもいいだろう。
「こりゃあ…まあ…あー」
問題は毒だらけになった町をどうするか…うーんと頭を捻らせて、案を練ろうとする基実だったが…
「無理!まっ、こんなんは実経に任せりゃどーにかなーるべ!」
たったったっ、と走り去っていく基実。
ちなみに、ここ、ヒュドラと戦った場所は一条家領地時空都市ティンダロスである。そして当主の一条実経は諸事情により、原初一族に会いに行っており、その間都市を綺麗に保っておけと言っていた。
つまり…この後めちゃくちゃ怒られることになるが…彼らは考えてもみなかった。
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