ゾンビパンデミック後の世界で

タカユキ

第1話新たな始まり

「太陽がしみやがるぜ。」

目に突き刺さる陽の光に目を細めて呟く。

両手を組んで上に伸ばしてストレッチすると、

背後から笑い声がした。


「クッソ笑う、何黄昏? 似合わねー。」

唇に微かに手をやり、苦笑するように俺を揶揄う陽奈の姿があった。


「うっせー! いいだろ別に、眩しいんだよ。」

反発しながらも、陽奈の顔をチラッと横目で見る。

整った彼女の顔は、いつ見ても惹きつけるものがある。


ミステリアスな瞳が真顔になると、全てを見透かされているかのように感じる。

彼女の細い首についてる黒いチョーカーが、余計に神秘的に思わせるのだった。


反面口調は、神秘性とは真逆だった。

それが男子達から人気があった。

コミュ力お化けで誰とでもざっくばらんに付き合える。


最近は元気がなかったから心配だったが、陽奈も明るくなった。


俺も化け物に襲われる夢を見て、寝不足ではあるが。


その化け物と戦った机に傷が残っていた。それは現実に起きたことだと実感する。


実はこの世界ゾンビが荒廃した世界で薬が発明されて、再び活気を取り戻しつつあるんだ。


俺も陽奈も大切な人を中学の頃に亡くしている。

でも、これからは前向きに生きていこうと、みんなの為に誓った。



「私の笑顔が?」


そりゃ眩しいって、こいつなに思わせてくれてる!

俺は首を縦に振る。


「陽奈の笑顔? 普通だな。」


微かに口角が上がるのを感じる。目を合わせられずにいた。


「嘘つけ、私の笑顔みてニヤついてた癖にさ。」 

指で唇を指して彼女が微笑んで言う。


「はぁ? 気のせいだろ?」

視線を自分の靴に逸らして言う。


「今もニヤついてるぞ?」


「マジかよ! くっそったれ。」

慌てて俺は、口を拭った。

食べ物食べてる訳でもないのに。


「あはは、動揺しすぎー。」

腹を抱えて陽奈が机を軽く叩く。


「おい、それより喋り方どうにかならんか? 男みたいだぞ?」


もう少しお淑やかになってくれればな。

オラついた口調だと、なんか男子と喋ってるみたいだ。


「分かりました、和人君。一緒に帰りましょう。どう、こんな感じ?」


「はい。」


ゾンビが滅んだって、陽奈を1人で帰らすのも不安だ。


「ぶっはー、なんだよ素直かよ。」

彼女が明るいトーンでツッコミを入れる。


「それはこっちの台詞だ!」


「オラついてる方が似合ってるかもねー。」


「お互いにな、ふっ。」


「ぷっはー、それはキツイ! その笑みなに?」


「なんだよ、文句あんのかよ。」


「ないけど、ちょっとカッコつけたでしょー。

よく考えたら可愛かも。」


「可愛いって嬉しくねーな。」


「ほほう…嘘ついてる表情にしか見えな。」


「嬉しい! これで満足かよ?」


「うん、満足!」


俺たちは笑いながら、教室を後にした。学校の廊下にはまだゾンビパンデミックの痕跡が残っていた。今でも都市のあらゆるところに残っているんだ。


「この学校もやっと平穏になってきたな。」

外の空気を吸い込み、ぽつりと呟いた。


「そうね。小学生の頃、退屈な毎日だなって思ってたら地獄が待ち構えていたなんて、一寸先は闇ね」

陽奈が目に悲しみを抱いて言った。


「そうだ、今は天国にいる気分だよ?」


「それは、私のせいでしょ?」

無邪気に彼女が言う。


「そうじゃないな。」

鼻で笑って言った。


「そこは同意しとけよ!」


そうだな、無愛想だったと反省し俺は彼女に、

少し間を起き優しく言った。


「天国じゃなくて、現実で幸せな気分ってな。」


照れ臭くて鼻をさする。

彼女が微笑んで頷きながら、目を閉ざした。

そして再び目を開けて俺を見つめる。


「和人〜分かってんじゃん!」


あははと笑いながら、俺たちは再生しつつある新たな世界を歩み続けた。



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