常世帰りのダンジョン配信者~最難関ダンジョンをソロで攻略した俺が、数多の神話を超えるまで~
鬼怒藍落
第1話:底辺お面付き配信者
「一年連続同接ゼロ人……まじでおかしいだろこれ」
学校終わりの日課で潜ってるダンジョンの中、俺は頭を抱えていた。
何度確認しようとも何度数字を見ようとも変わらない同接数。
流石にと思って配信画面を確認するも無情にも【live中】の文字は表示されており……現実はやっぱり非情。
本来ならさっきみたいな事を配信で言うのは御法度などだが……あまりにも人が来ないせいで気にする必要が無いというのがさらに悲しかった。
「……今日も帰るか、お疲れ
「
そうしてダンジョン配信を適当に終わらせてスマホをポケットにしまえば俺が使っていた刀が人型に変化する。
現れたのは濡羽色の髪をしたとても綺麗な金眼の少女。色々際どい包帯だらけの衣服とも言えないようなものを纏った彼女は、俺が倒して放置していた魔核を集めるのを手伝ってくれる。
「……あぁ、どうやったら伸びたんだろうなぁ」
そして集め終わった後でのその呟きはダンジョンの中に消えていき、最後にしようと思ってた配信は人知れず終わった。
――――――
――――
――
今から数十年前のこと、この世界に突如としてファンタジー作品などで有名なダンジョンというものが現れた。
ダンジョンからは魔物や日本で言うところの妖怪のようなものが溢れて、当然だが混乱したこの世界。
だけど時間が経ったことで、ダンジョンに関わる法整備などが進んだいまではダンジョン冒険者も立派な職業のひとつとなり……日常では味わうことの出来ない刺激的なダンジョン内部に潜って配信する【ダンジョン配信】は現代の娯楽となっている配信のなかでも指折りの人気ジャンルとなっていた。
ダンジョンでは勿論だが死人は出るし、その中では命が派相当軽いものだ。
それをエンタメとして配信する【ダンジョン配信】には批判の声も集まるのだが、それが規制されることはなく、むしろ世界中から推奨されていたからである。
理由としてはダンジョンには力を手に入れる手段や現代ですら解析できない様々なオーパーツが眠っているからであり、ダンジョン産の素材やダンジョンで得た力はそのまま国力に繋がるからだ。
それ故、各国としては国力を上げるためにもダンジョン攻略を煽る配信行為は後押しされ――今や子供が憧れる職業でぶっちぎりの一位を取っていた。
そしてそんな事を語る俺も一年前にあるダンジョンを攻略したことから一攫千金を夢見てダンジョン配信者となり……今まで頑張ってきた。
ダンジョンを攻略して調子乗ってたのは分かるが、現実というのは本当に非情であり全く上手くいかなかった。
「才能はあったと思うんだけどなぁ」
俺が潜っているのは下層と呼ばれるかなり厳しい場所。
それを相棒である空の力があるとはいえ、ソロで生き残る事が出来ている俺は少なくとも少しは実力はあるはずだし……とそんな事を心底思う。
「空も悪いな……こんな俺で」
「大丈夫、私は燐といれればそれでいいから」
初めて攻略したダンジョンで出会った相棒である彼女。
本当ならもっといい暮らしを彼女にさせてあげるためにも稼ぎたいのに……どうしても配信が上手くないかない。
ダンジョンさんのオーパーツも運が悪いのかあまり手に入らないし、こんなんならば普通にバイトした方が良いかもしれない……本当に今のままじゃ彼女の力に頼りっきりの
「ッ駄目だそれだけは駄目だ……あの日に俺は空を幸せにするって誓ったんだ」
「嬉しいけど改めてどうしたの?」
「……いや、頑張らないとなって」
でも、もうチャンネルを始めて一年が経ってる。
貯金もあんまり残ってないし、色々試行錯誤した結果がこれなのだ。
俺と同じようにダンジョンを攻略する配信だってあるし、もっとダンジョン攻略をスタイリッシュにしたりとかトーク力を磨くとか色々あるだろうけど……そんなことはもうとっくにやっている。
「はぁぁぁぁやっぱり向いてなかったんだな俺」
「……どうしたの燐、私と一緒に引きこもる? 大丈夫、ご飯も燐の世話も全部私が……」
「いやそれだけは駄目だから、バイトはするからそっちのルートは却下で」
「そう――残念」
「空ってたまに怖いこと言うよな、冗談だろうけどさ」
「むぅ……冗談じゃないのに」
「はいはい」
そんなこんなで下層から上がっていき、途中で出てきた妖怪を空で倒し続け下層から出て中層に差し掛かった時だった――。
「誰か――誰か助けて!」
誰かの切羽詰まったその声が、俺の耳に届いたのだ。
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