第9話 達子誕生
「警視庁が男女2人の写真を公開しました。かねてより100万円の賞金がかかって有名になった強盗致傷事件の重要参考人」で途切れた連続ニュースは全国を駆け巡った。渋谷の○○ビルの巨大な壁面スクリーンに2人の顔が映し出された。2人は渋谷の歩行者天国にいて、目の前にいる人物がスクリーンの顔らしいとすぐに分かった。互いに面識はなかったが、一緒に逃げ出す羽目になった。様々な人たちに追い掛け回され、2人は協力しながら壁をよじ登り、ビルからビルへ飛び移り、2人とも、何がなんやら、どうなっているのかわからず、「私達はなんかやらかしたことになっているの?」と言い合いながら逃げ回った。
親も友人も大変なことになった。
しばらくして、「警視庁が男女2人の写真を公開しました。かねてより100万円の賞金がかかって有名になった強盗致傷事件の重要参考人の逮捕に協力した男女2人を表彰するため、警視庁に出頭してもらいたいとしています。」と、連続ニュースが放映された。映像は、歩行者天国で、ナイフを持った強盗犯人2人が警官に追われて走って逃げており、子供の列に向かって行った。その前に1人の小さな子供が現れた。そこに男女2人が左右から現れ、強盗犯人たちの行く手に立ちはだかった。強盗犯人たちは向ってきた。男女2人は同じタイミングでナイフを持った手に小手を、頭を打った。見事な空手だった。強盗犯たちは倒れて、逮捕された。すべてが放映されればよかったが、途切れたために、ややこしいことになった訳だ。
群衆から逃げ回っていた2人は、呆然とたたずんだ。呆れた顔で、「お疲れ様」と言い合って、2人は別々に帰って行った。
「男性がオープンカフェの椅子に腰かけようとしたら、小さな子供が親とはぐれて、立っていた。渋谷の歩行者天国で見た子供だった。子供に話しかけて、椅子に座らせ、大きな声で母親を呼んだ。母親が子供のところに来たが、彼女のようだった。魅力的な女性だった。目が合って、2人は、ほほ笑んだ。」男性は夢から目が覚めた。
「女性がオープンカフェの椅子に腰かけようとしたら、小さな子供が親とはぐれて、立っていた。渋谷の歩行者天国で見た子供だった。子供に話しかけて、椅子に座らせ、大きな声で父親を呼んだ。父親が子供のところに来たが、彼のようだった。魅力的な男性だった。目が合って、2人は、ほほ笑んだ。」男性は夢から目が覚めた。
2人の夢は互いに配役が逆転していた。もう一度会いたいと思った。
「2人が渋谷の歩行者天国を一緒に歩いていたら、後ろから小さな子供が現れて、2人の間に入って手をつないできた。2人が小さな子供を見ると、笑顔がかわいかった。その子は2人の手をつながせて、こちらを向いてほほ笑んで、羽が生えたかのようにスーッと空高く舞い上がっていった。」 2人は同じ夢から目が覚めた。
○○大学にパトカーが止まっていた。顔写真で手配?された男女2人は、偶然、同じ大学の3年生と1年生だった。2人とも、空手の有段者だったが、空手部には所属していないので、周りの学生はびっくりだった。警視庁で表彰された後、2人は渋谷の歩行者天国に行った。2人の前に小さな子供が歩いていて、振り返ってニコッとして、「ありがとう」と言った。あの子だった。2人が近づこうとした時、羽が生えたかのようにスーッと空高く舞い上がっていった。2人は、夢か幻か、顔を見合った。
2人はスキーに行った。乗ったゴンドラが止まってしまった。3時間経ったが、救助隊が来なかった。中に、あの子供もいた。凍えてしまいそうだった。雪面まで3メートルだったので、2人は子供を抱えて飛び降りた。子供を背負って林道を通り、ヒュッテに辿り着いた。子供は無事だった。2人がかがんで子供の様子をじっと見ようとした時、羽が生えたかのようにスーッと空高く舞い上がっていった。不思議な感覚だった。2人が何をやっても、その子がいた。
5年後、2人に娘が生まれた。「達子と呼んでね。」という強くて優しいイメージを、達子の両親が受け取った瞬間だった。3年経った。あの子だった。2人は「この子を守ろう!」と誓い合った。
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