転生ゴブリンは気の向くままに世界を掻き回す
怒米
第1話
朝目が覚めたら洞窟の中でゴブリンに転生していた。
トラックに撥ねられた記憶はないし、神様にも出会ってない。
何の前触れも無く、しかも人外転生なうえにゴブリンとか何の罰ゲームだよ…
周りには俺と同じ生まれたばかりの5匹の子供ゴブリンが、地面に横たわっている産みの親と思わしき全裸の女に群がっている。
「いやぁ…もぅ…殺して…」
『ゲギャギャギャッ!!』
子供ゴブリン達は弱々しい声で命乞いする女を殴ったり、繁殖行為をしながら耳障りな鳴き声を上げている。
日本で生きていた頃の俺なら見てるだけで胸糞悪くなる光景なはずなのに、寧ろ今の俺は混ざりたくて仕方無い。
本能を抑える事が出来ず、取り敢えず髪でも引っ張ってみるかと思い俺も女性に近づいていく。
女の頭の方に寄ると、近くに居る子供ゴブリンが唐突に俺を殴り付けてきた。
「いきなりなにすんだよ!?」
「うるさい!!今は俺が遊んでるんだ!!お前は邪魔だ!!どっかいけ!!」
そう言いながら子供ゴブリンは更に俺を殴ってくる。殴られた俺は無様に地面に倒れた。その様を5匹の子供ゴブリンが嘲笑っている。
許せない。たかが下等生物の分際で俺を見下すなんて許されざる行為だ。
今すぐブチ殺してやりたいが、お互い子供で体格に差がなく、更に奴等の方が数が多い。どの世界でも数の暴力は脅威だ。
武器でもあれば多少は戦力差を縮められるのだが、生まれたばかりの俺が持っている訳ない。
何かないかと辺りを見渡すと、女の投げ捨てられてる荷物の中から小振りなナイフが見えた。
あのナイフがあればあの下等生物共をブチ殺せる。
俺は殴られて逃げる振りをしながら荷物に近づいて手に取る。その小振りなナイフは、子供の体の俺にも何とか片手で持てるサイズだった。
ナイフを右手で握り締め、背中に隠しながら俺を殴り飛ばした子供ゴブリンの背後から近づいてく。
殴ってきた奴はもう俺の事なんて眼中に無いのか、女性の髪を引っ張るのに夢中になっていた。
ふざけるな。それは俺がやろうとした遊びだぞ。勝手に真似してるんじゃねぇ。
今だに髪を引っ張り続けている子供ゴブリンの首に、無言で両手に持ち替えたナイフを振り下ろす。振り下ろしたナイフは上手く頸動脈を切り裂いたのか、噴水の様に血を撒き散らした。
「あはははは!!遂にブチ殺してやったぞ!!ざまぁみろ!!」
「てめぇ何しやがる!!」
「うるせぇ!!俺を馬鹿にしたお前らは皆殺しにしてやる!!」
流石に近くで仲間が死んだらどんな馬鹿でも気付くか…残りの4匹は何故か1匹ずつ俺に向かってくる。俺を囲めば簡単に殺せるのにどうして数の利を活かさない?
ああそうか、こいつらは馬鹿だからそんな事も考えられないのか。俺にとっては敵が馬鹿なのは都合が良いが。下等生物でも役に立てるんだな。
一番最初に向かって来た子供ゴブリンの心臓部分にナイフを突き入れる。血を吐きながら絶命した子供ゴブリンの死体を思い切り蹴り飛ばすと、後ろから向かってきてた子供ゴブリン達は巻き込まれて転倒した。
纏まって倒れながら悶えている子供ゴブリン達の首元に素早くナイフを差し込んでいくと、4匹の子供ゴブリンは体を痙攣させた後絶命した。
はは、やってやったぞ!!最高にいい気分だ!!
俺が絶頂しそうになる程の高揚感に浸っていると、脳内に謎の情報が流れ込んできた。
チャイルドゴブリンLv1→Lv3
何だこれ?まるでゲームのステータスみたいだな。レベルが上がるのは良いんだけどさ、もう少し詳しく知る事は出来ないのか?
そんな事を考えていると、再び脳内に情報が浮かび上がってきた。
——————————
チャイルドゴブリンLv3
『繁殖Lv1』
他種族の雌個体を孕ませる事が出来るようになる。Lvが上昇する度に産まれる個体の数が増える。
——————————
おお、これが異世界転生のテンプレのステータス画面か。なんか随分と簡素だが、何も分からないよりは全然ましだ。
レベルが一気に2も上がったのは、名前の通りまだ子供だから必要経験値的なものが少ないんだろう。体もレベルが上がる前より動き安くなっている。
繁殖のスキルはゴブリンの定番な能力って感じだ。スキルのレベルが上がってないのは、使ってないからか?
この世界で生き残るには強さが必要になるだろう。ゴブリンなんてモンスターが存在する以上、他のモンスターが居ないなんて楽観的な考えは出来ないし、他種族の雌を孕ませるなんて人間にとっては駆除対象だろう。
今すぐレベリングしたい所だが、その前に確認しないといけない事がある。それは親ゴブリンの存在だ。俺が生まれたからには、雄のゴブリンが居るのは確実だ。
どれだけの数が居るのかは分からないけど、1匹でも遭遇したら殺されるのは間違いない。今は洞窟に居ないのか姿が見えないが、いつ戻ってくるか分からない。
取り敢えず、暫くは物陰にでも隠れて様子を伺うしかないか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます