第11話
征司が親睦会をするという提案をした日から数日、あの日はとりあえず絵梨を落ち着かせ花蓮に送ってもらった。仮に絵梨がギルドに来ても天音に訓練所の使用を許可しないようにお願いしたから問題ない
そしてGW最終日、征司はギルドにいた。最初はどこか別の場所で待ち合わせをしようと思ったが花蓮が一緒のため征司状態では会えない、黒狐状態で外を歩くのはあまりに目立ちすぎる。結局いつも通りの黒狐でギルドでの待ち合わせになってしまった
「提案したのはいいが親睦会・・・何をしよう・・・」
親睦会、つまりは交流会。前世ではやらないこともなかったが人が多かったこともあり別段気にしなかったが今世で自分含めて3人、しかもうち2人は女性、肩身が狭く感じる
「(無難に食事と今後の方針的なことを話せばいいか)」
そんなことを考えているとギルドの入り口から花蓮が絵梨を連れて入ってくるのが見えた。花蓮はキョロキョロしながら誰かを探している様子だったがすぐに征司を見つけるとこちらに駆けてくる
「ごきげんよう黒狐様、今日はお誘いいただきありがとうございますわ」
「ああ、絵梨も来てくれてありがとう」
「・・・・・・・」
花蓮は征司に一礼に挨拶する。一方の絵梨は征司と会ってからずっと俯いている。
「そう緊張しなくていい、単純にパーティーメンバーとして親睦を深めようとするだけだ」
「あら?私もパーティーメンバーなのですの?」
笑みを浮かべわざとらしく聞いてくる花蓮に、何をいまさらと思いながら笑いをこぼす征司。その間も絵梨は俯くだけだった
「大丈夫か?」
「・・・はい、大丈夫・・・です・・・」
絵梨は小さな声で応える。花蓮は一瞬心配そうな顔をしたが何も言わなかった
「(どう見ても大丈夫じゃないな)」
最初の頃のような元気な姿からは想像できないほど落ち込んでいた。
征司はそう言い2人を案内する。これから行くのはギルドに併設されているレストランだ。レストランと言ってもそんな堅苦しいものではなくファミレスを少し豪華にしたようなところだ、学生の親睦会などそのあたりで十分だろう
3人はレストランに入ると席に案内され座る、征司の対面に絵梨が座りその横に花蓮が座る。各々メニューを見た後注文を済ますと征司は2人に話し始める
「さて、親睦会とは言ったが実はあまり考えていない・・・何かあるか?」
「では私から」
花蓮は手を上げる。絵梨は俯いたままだった。
「じゃあ、花蓮」
「黒狐様はどうして仮面を被っているのですか?」
まあ、そうだよなと思いないながら言葉に詰まる果たしてこれ以上征司の秘密を広めてもいいものかと
「・・・それは」
「あ、別に言いたくないならいいのです!ただ少し気になって・・・」
言いよどんだ征司に花蓮は慌てて言う
「・・・・すまないが今は言えない、だがいずれ時が来れば必ず話す」
「・・・わかりましたわ」
征司がそう言うと花蓮はそれ以上追求しなかった。その横では絵梨がまだ俯いているのを横目で確認し話題を変えることにする
「じゃあ、自分から1つ、絵梨・・・無理をするな・・・」
「っ!」
征司の言葉に絵梨は肩をビクッとさせる。まるで怒られている子供のように俯き続け消えそうな声で征司に言う
「・・・無理、してません・・・」
「いや無理している、だから言っているんだ」
「無理・・・してません・・・」
絵梨は震えながら征司の言葉を否定する。その様子を見る花蓮は心配そうに見つめる
「・・・私は頑張れてます・・・まだ全然足りなくて・・・」
そんな絵梨を心配そうに見つめる花蓮に征司は声をかける。
「・・・絵梨・・・月並み程度の言葉だがお前はお前の歩幅で成長すればいいんだ、無理に追い付こうとしなくていい」
「・・・私は・・・頑張れてないんでしょうか・・・」
「いや、絵梨は十分頑張っている、今のお前なら前の探索以上に動けるはずだ、もっと自分を誇れ」
「でも私、足が遅いんですよ・・・s、黒狐さんが遠くに行くのが怖くて」
「大丈夫だ、その時はお前を迎えに行く」
「大丈夫、貴女は十分強いわ・・・でも黒狐様の仰る通り無理して追い付こうとしないでね・・・」
2人の言葉に絵梨は顔を上げる。その顔は涙で濡れていた
「・・・私・・・私は・・・」
「絵梨、お前は十分強い」
征司はそっとハンカチを差し出しながら言う。花蓮もそれに続き絵梨の涙を拭う
「・・・はい、ありがとうございます」
2人は絵梨が泣き止むまで静かに待っていた。しばらくして絵梨は落ち着きを取り戻し2人に謝る
「ごめんなさい、お見苦しいところを・・・」
「いいのですよ」
「ああ、大丈夫だ」
落ち着いた絵梨を見て2人は優しく微笑む。その後は他愛のない会話をしながら食事を楽しみ3人は親睦を深めていった
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