パティシエ探偵

大和 真(やまと しん)

第1話ページ1,2

「パティシエ探偵」

               大和 真

「いらっしゃいませ田中様。本日は初夏のメロンをふんだんに使った、メロンのドルチェがお勧めです」

「いつも美味しいスイーツを勧めてくれるから嬉しいわ。先日の、びわを使ったデザートあったでしょ。職場を退社される方にプレゼントしたら大喜びしてくれたのよ。びわをゼリーに溶かして、スポンジと何層にも重ねたのが良かったわ」

 東京練馬で、スイーツショップ(うらら)を営む権田健三はオーナー兼パティシエ。権田の母、則子が自宅を改装し、スイーツショップうららをオープンさせたのは、健三がまだ小学校に入る前だった。時は三十数年流れ、メインパティシエは、則子から健三になり、則子は健三の補助的な役割。長く同じ地で商売を続けていると、変な話が舞い込んでくる。先日も常連客の長田から、飼い犬のヨークシャーテリアが逃げたと相談があった。健三は、ある程度の商品の用意をし、則子とアルバイトの海老名さんに店を任せ、長田と犬を捜し歩いた。健三も、長田の愛犬ライトを良く知っていた。超小型犬のヨークシャーテリアの割に大きい身体のライトは、体重が七キロを超えていた。臆病で人懐っこい性格のライトは、健三にも良く懐いて、店に来てくれる時は、外で繋がれ待っているのだった。長田の買い物後に、健三は外に出て、ライトをなでたりしていた。そんなライトが、家の玄関を開けた隙に居なくなった事を、一日前に相談された。健三には、ライトが行きそうなところは察しがついていたのだ。ライトは臆病な性格だが、食欲は旺盛。外に出たものの、どうしていいか分からず先ずは近辺をウロウロした。その後、空腹になり行きついた先は健三には、見当がついていた。午前十時にうららに来てください、と長田に伝えていた。長田が現れ、健三は、後ろをついて来てくださ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る