第2話 自殺から転生(2)

 俺の意識がある? 白い空間に俺は佇(たたず)んでいた。俺はものを言えぬ肉塊になったはず。なんでだ? 

「君は新田優だね。飛び降り自殺して…その自殺の理由は人生の後悔か。その後悔を払拭したいと思わないかい?」

男か女か…若いのか年寄りか判別できない不思議な声が語りかけてくる。

「誰だ? あんたは?」

「私は名無しの神さ。君の後悔の念に引き寄せられた名もなき神だよ。」

「そんな、名もなき神が俺に用があるのか?」

「そうさ。一から人生をやり直してはみないかい?」

「一からやり直すだって?」

「今なら唯一無二のスキルをたった一つだけど授けることができる。」

「そうか。神とやらに俺は感謝しないといけないな。」

 今まで神様を信じてなどいなかった俺は不敬なのだろう。それでも大丈夫なのか不安だ。

「安心なさい。君の不安な気持ちは見通しているよ。早速だけどね…君にはとある芸能人夫婦の子供になってもらうよ。」

「スキルは?」

「君が無意識下に求め、渇望したスキルを与えたよ。その効果は自ずとわかるさ。」

じわじわと白い空間から離れてゆく身体。浮いていく身体。

「君は新たな生命を与えられた。新たな名前を持つことになるかもしれない。でも、君は乗り越えられる。そういうスキルを与えたよ。それでは新たな人生を…楽しんでね……。」

声が聴こえなくなったと同時に暗い空間で目覚めた。その暗い空間は脈動していてどこか懐かしい。俺は気づいた。きっとこれは産まれ直しているんだと。安心感がある母体の中にもう一人いることに気づいた。多分俺は双子として産まれるのだろう。そう思考を巡らせている内に徐々に暗い空間に光が差し込んで来て……。

「新田(にった)さん。元気な双子の赤ちゃんですよ! おめでとうございます!」

「「オギャア、オギャア!」」

赤ちゃんとしての生活が幕を開けたんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る