2024/06 ◆昨春の制服そっと抱きしめて 高校生のあたしを撫ぜた

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自選(5首)



昨春の制服そっと抱きしめて 高校生のあたしを撫ぜた





嗤ってた明日が来なきゃいいのにねってシニカルリリカル 全部ゴミ箱





死なないでって言えなかった日の朝は 静かな青に包まれて晴れ





夜は底 どこに在るかは知らずとも 月の南極そこにゆきたい





みたらしとあやめを違うと思っていて 甘くないのが野の花の名だと



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苦く春 灰色をした電車では誰かの傘がふくらはぎぶつ





パンプスは私を女をひとりにし蹴飛ばしていくこの世のぜんぶを





ねぇねぇねぇ都会の夜は孤独だね、あまねく空は黒くて迷子





全世界君に優しくあってくれ 嘘ですやっぱ私だけでいい





真夜中のカラフルレトロがうるさくて あたしの愛した騒音は夏





MCで微笑まないで もうやめて 違うよそんなのロックじゃないもん!





私以外家族みんなふたえなの でもそれでいい君もひとえだ





右の手のくすりゆびがツッと走るうぶげを纏った桃の頰を





唇のバニラがひやりと優しくてひとくち止まったアイスクリン





もう終わる夢と別れて進む先 蛍光灯が私を宥める





早朝に 目に乗せるクラゲ 泳ぎ始める私の茶色い海の浅瀬を





表情も指先からの散る汗も君がアイドルだって証拠





君の頬 そこに散らばる黒い星繋げて願うちいさな秘密





六月の濡れた本の水抜きはあなたと降られた雨のパフューム





寝る前は祈る様に北東を臨む すきなひとが住んでる方角





まどろみのなかで君に呼ばれてて起きたらLINEが来ていた喜び

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