第13話: タクミのプロポーズ
二人は、三上家の客間に二人きりだった。
ついちょっと前、公平が「これからは、初代を中心に、私達ミカミ財団がこの世界を立て直していきます。もう心配はいりません。すべて任せてください!」と二人に固く誓ったあと、にやりと笑って、「そうだ!私は財団のビルに行かねばなりません…お二人はここでしばらくおくつろぎください」と言って、そそくさと出ていったのだ。
「どうしたのかな、公平さん…なんであわてて出ていったんだろう?」ルミエールが不思議そうに首を傾げる。
公平は、タクミの中の決意を察したのだ…そういう気の利かせ方は、ミカミくんに似ているなと、タクミは思った。
「けど、服の件は話がついたんだよね?」タクミが静かな口調で言う。
「そうだけど…ま、いっか。無事に終わったことだし」ルミエールがリラックスして背伸びをする。
「終わったね、ルミエール。すべて解決した…これで君も、堕天使にならなくて済むね」タクミが笑顔で言う。
「…それはそうだけど。」ルミエールは、なぜか浮かない顔をしていた。そんな様子を、タクミはじっと眺めている。…その理由を知って、タクミは笑った。
「そうか!君が堕天使になったら、人間界に来ることになる…そうすれば、僕たち、ずっといっしょにいられたかもね。」
「うん!私は、そっちの方が…え!タクミ、また私の心を読んだの?」
「ハハ。バレた?」タクミが笑いながら謝る。「けど、それ以上は読んでない…今から大事なことをルミエールに言いたいからね」タクミが真剣な顔でルミエールを見つめる。
「大事なこと?なに?」ルミエールの心臓がドギマギする。
「一応、確認だけど…ルミエールはまだ、結婚していないよね?」
「け、けっこん?そんな相手が私にいると思う?てか、フィアンセも恋人もいないよ!」ルミエールがきっぱり否定する。
「良かった…じゃ、もし、僕が天使になれたら、結婚してくれる?」
「ええ!…いいよ。タクミがどうしても、って言うなら。」ルミエールが顔を真赤にして答える。
「ホント!」タクミがこれ以上ない笑顔をルミエールに向ける。
「うん…あれ?なんでタクミ、このミッションが成功したら、天使に生まれ変われること、知ってるの!私、話したっけ?」ルミエールが首を傾げる。
「それ、今の僕に聞く?」
「…そっか。私の心の声か。」ルミエールが静かに微笑む。
「怒った?」
「ううん。…でも、天使に生まれ変わったとき、あなた赤ちゃんだよ!私のこともきっと忘れてる」ルミエールがさみしそうにつぶやく。
「ルミエール…君はもう一つ、隠していることがあるね?」
「え…なに?」ルミエールはどきりとした。
「ボクが今の記憶を保ったまま、きみと同じ三百歳の天使として生まれ変われる方法がある、ってことをだよ」
「タクミに隠し事できないね…」ルミエールがため息をつく。「もしタクミが、審判のときに、自分の記憶を保ったまま、三百歳の天使として生まれ変わらせてほしい、と願えば、ルール上は認められる…その代わり、タクミの寿命が三百年も減っちゃうんだよ!タクミはそれでいいの?」
「かまわないよ、それくらい」タクミが笑いながら答える。
「けど、それだと天使界で、若い頃の楽しい思い出が作れない…みんなで学校行ったり、恋をしたりね。そんなのタクミがかわいそうだよ…」ルミエールがつぶやくように言う。
「ルミエール…ボクにとって、そんなことはどうだっていんだよ。ボクは君を愛してる…君とずっと、一緒にいたいんだよ」
「ホント!…わたしも愛してるわ、タクミ。わたしもあなたとずっと一緒にいたい!」
「じゃ、決まりだ!天使ルミエール様、どうか僕と結婚してください。」
「はい!喜んで。」
その瞬間、二人の間に暖かい光が差し込み、周囲の景色がふわりとぼやけた。次に気づいたとき、二人は天使界の美しい庭園に立っていた。鮮やかな花々が咲き誇り、清らかな泉が湧き出るその場所は、まさに天国そのものだった。
「ここが天使界…?」タクミは驚きの声を上げた。
「うん、ここは天使界の庭園。私たちが結婚の誓いを立てる場所よ。」ルミエールが微笑みながら答えた。
二人は手をつなぎ、庭園の中心にある大きな木の前に立った。そこには天使界の仲間たちが集まり、二人を見守っていた。
「タクミ、ルミエール。あなたたちの愛と勇気に敬意を表し、ここに結婚を認めます。」長老の天使が厳かな声で宣言した。
タクミとルミエールは、互いの手をしっかりと握りしめた。「これからもずっと一緒だ。」タクミが優しく言った。
「うん、ずっと一緒。」ルミエールが微笑みながら応えた。
二人の体はまばゆい光に包まれ、天使たちの祝福をいつまでも受けていた。
…タクミとルミエールの冒険は、ここで終わりです…
地球の天使、ルミエールと行く、三百年後の未来 @Taka123M
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