フェアリーブルーム4
仕留めた四つ腕人形ですが、確認したところ全身の装甲はどうやら人間も着れるタイプの軽鎧であったようで、素材も軽く、薄く、ラキくんの攻撃を喰らってもひしゃげていませんでした。アジャスター付きで私でも着られそうですのでこちらはお持ち帰りします。
また胸の装甲を剥がすとマナジュエルがハマっていましたので回収しました。マナジュエルの買取額は五十万円。つまり四つ腕人形は一体で五十万円以上の収入が得られるボーナスエネミーというわけですね。
それにしてもこの四つ腕人形は魔獣ではなく、異世界人産の警備ロボットのようなものなのでしょうか。魔法具の一種だと考えれば、上手く捕獲できれば私が操作することも可能になるかもしれません。他に稼働している個体がいるかは分かりませんが、できれば一体ぐらいは無傷で捕まえて持ち帰りたいですね。
―――――――――――
はい。捕まえました。
「ふーーー」
「大丈夫ですよラキくん。動きませんから」
あれから通路を進んですぐに四つ腕人形が二体出てきました。やはりこちらを認識した途端に駆け出してきたので時間遅延で動きを遅くし最初の一体の四肢……六肢? と頭部を石砲弾で破壊しました。続けてもう一体は収納ゲートで取り囲んで拘束し、ラキくんに胸部装甲を剥がしてもらってマナジュエルを抜き取って確保したのです。やはり動力源であるマナジュエルを外せば止まるようです。
そんなわけで確保した個体はラキくんに担いでもらったのですが、ラキくんはまた動き出すのではないかと警戒している模様です。見る限りは大丈夫そうですが、予備バッテリーが存在している可能性もありますし、注意はしておきましょう。
それにここから上に戻るときのことも考えなければいけません。あの真上に伸びているパイプ内部を四つ腕人形を持って登って行くのは大変です。一度戻って底まで届く長いロープを用意して引き上げていくしかないですかね。こういう時は普通の収納スキルが羨ましく感じられますが、ないものねだりをしても仕方がありません。上の遺跡に通じている通路でも見つかればいいんですけど。
「フーッ、キュルッ」
「あ、はい。そうですねラキくん。今は目の前のことに集中しないと」
この先のことを考えていたらラキくんに叱られてしまいました。
確かに一瞬の油断が命取りになるのが探索というもの。とはいえ、本当にここって何の施設なのですかね。窓ガラスで部屋内部が見れるのですが、どうにも中の様子を観察するための部屋……という感じで、室内に白骨死体があるのも気になります。人体実験か何かの被験者を観察してた……ということですかね。
その後も四つ腕人形が何度か出てきましたが、苦戦はせずに仕留められました。近接のみですし、油断しなければ同じパターンで倒せるようです。
そして手に入ったマナジュエルは全部で九個、ナイフは三十六本です。人形本体や鎧は嵩張るので放置です。持ち帰る方法が決まったら回収しに戻りましょう。それと通路の一部が崩れて進めず、今のところ悪趣味な観察室ぐらいしか見るべきものはなく、室内にも目ぼしいものはありません。もしかすると崩れた通路の先に研究室とか備品庫とかあったのでしょうか。現時点でも四つ腕人形のおかげで四百五十万円以上の収穫はありましたので問題はないのですが。
「キュルッ」
「おお、ラキくん。確かにあそこは開いていますね」
さらに先に進んでいくとラキくんが扉の開いた部屋を発見いたしました。窓ガラスは真っ暗で中が見えなくなっていますが、これは室内が隠されているのではなく木の根? ……が、内側に張り付いているだけのようです。扉も内側から伸びている木の根っこに強引にこじ開けられていた感じですね。
警戒しつつ中に入りましたが、そこは体育館くらい広く、天井もずいぶんと高いです。また中央には大木がありました。ここは一体……うん?
「フーーーッ」
ラキくんが警戒しています。サーチドローンも大木から何かしらの反応があると警告をしてきてくれています。それに覚醒施術を受けた私も今では多少魔力の流れというものが感じ取れるようになっておりまして、大木の中心に花の蕾らしきものがあって、周囲の魔力がそこに流れているようなのが分かります。
また私がまごまごしている間にも大木が枯れ始め、枯れ葉が雨のように落ちてきました。蕾を狙って撃とうかとも思いましたがそれは止めました。敵意は感じませんし、悪いものでもなさそうです。
そうしている間にも蕾が開き、花びらが開き始めます。
さて、鬼が出るか蛇が出るか。そして、
「※※※※※※※※※?」
花の中から出てきたのは全長15センチメートルほどの、蝶のような羽の生えた女性でした。アレはもしかして妖精というものでしょうか?
ちなみに何かこちらに話しかけてきているのですが私には何を言っているのかさっぱり分かりません。これは……フランス語?(※違います)
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【次回予告】
大樹は崩壊した。
滅びが迫る地の底で死に瀕した善十郎は妖精と対峙する。
そして目覚めた彼女は何を想い、善十郎に何を望むのか。
タイムリミットはもう間も無く……
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