あの夏へ、もう一度
たこ夜気暑
第1話
あの日、私はまだ幼くて、臆病で________
暑い、すごく暑い。
独り暮らしを始めたばかりの部屋は何もなく、資金も少なかった為にエアコンも買えなかった。
実家から何とか許可をもらって持って来た扇風機では、部屋中を快適な温度にするなんて到底無理な話だ。
濡らしたタオルを掛け、強風で回す。扇風機の前は涼しいが、一歩離れれば地獄だ。
エアコンは買えないが、風鈴ぐらいなら買える。もう、風流に頼るしかないのか。
ピーンポーン
しょうもないことを考えていると、突然の来客である。
平日の昼間に訪れるような友だちなんていたか?
何かネットで買ったっけな?
疑念を抱きつつインターホンの前に立つ。
エアコンはついてないくせに、映像が映る式のインターホンはついているんだから。
皮肉な思いとともに、映っている人物を見て声が出る。
「えええええええええ、何でいるわけ?」
「ひでえな、せっかく来たんだから、歓迎しろよ。」
どうやら、相手に筒抜けだったようだ。くそ、高性能なインターホンめ。
仕方なくドアを開ける。
「いやあ、暑すぎ。って!部屋あつうううう!!」
「あー、エアコンないもので。すまんねえ。」
「は?死にてえのか?」
突如としてやってきたのは小学校の友人、
口は悪いが、まあ、いいやつではある。と信じたい。
「てか何で家知ってんの?誰にも教えてないんだけど。」
「あたしの能力なめんじゃないよ。
多紀というのは私、
ほう、これは、今度しめに行かなくては。
「え、でも亜理紗、今彼氏と東京で同棲してたんじゃ。急に何で、わざわざこんなところまで。」
なんてったって、ここは福岡である。
「まあ、話せば長くなるからさ。とりあえず、ご飯行かね?」
どうやらエアコンがない部屋はごめんらしい。
「お金、ないから無理。」
「あー、じゃあ、おごってやるから。ほら、行くぞ。」
「ちょちょちょ、扇風機とめてくるから、ちょっと待って。」
「あー、急げよー。」
こうして半ば強引に近くのファミレスへと向かったのであった。
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