守りつつをらむ 〜真比登とその雛たち〜
加須 千花
第一話 カラスの鳴き声は、ころく。
※
※
※
万葉集
* * *
奈良時代。
一人の
楽しげに
ここは
秋の早い日暮れで、茜色に空が染まりはじめ、斜陽が、市に並んだあらゆる食料、
なぜ、人々はその
その
その
しかし全身の皮膚には、その時にできた
もう健康体で、その
朝から、水しか飲んでいない。
米や野菜が、真比登の家にないわけではない。
だが、真比登は昨日から
だから、朝から水しか、飲んでいない。
真比登は、いつも、
でも今日は、
(
食事が作れれば、もう、あとはなんでも良い。)
今は家に真比登たった一人しかいない。
炊事や家事をする
(
オレにはそのような
真比登を見る通行人が、ある者は、
「あっ!」
と驚き、またある者は無言で顔をしかめ、真比登のまわりから引いてゆくのを見ながら、真比登は瞳に傷ついた色を浮かべ、荒んだ笑みで口元を歪めながら、歩いてゆく。
奴婢売りを見つけた。
「目ぇーやすし!(目に良い、良い品物を揃えているよ。) さあさ、見てくれ、使い捨てにふさわしい小さな
(ちっ、
真比登は、生来、心根のまっすぐな
見れば、軽快に呼び込み調子を続ける色白の奴婢売りの
奴婢売りを守る、屈強な浅黒い肌の
その屈強な
顔立ちが似通い、二人ともハゲだが、背が少し低い
その白い男一人、黒い男二人に囲まれて。
七、八歳ほどの
ひどく痩せこけている。頬にも、首にも、桃色の衣の袖からのぞく手首にも、肉がない。
(ひどいな。)
(あれでは、買っても、一日二日で黄泉渡りしてしまうのではないか……?)
それでは、真比登も買うわけにはいかない。
夕暮れ、真っ赤に染まる空。
秋の寒々しい風がヒュゥゥゥ……、と吹き、近くの木の梢で、真っ黒い
───
と女童を見ながら鳴いた。
さながら、
ふら、としゃがみこんでしまった。
「立て!」
背が高い
真比登は見ていられなくて、顔をぎゅっとしかめた。
(奴婢は、奴婢売りの物だ。ムチをくれようと、オレが口出しできる事ではない……。)
「やめてくれ! やめてくれ!」
一人の
年齢は、十三、四歳ほど。
身なりは悪くない。
それなりの豊かな暮らしをしているように見えた。
一目で、たくさん歩いたあとだとわかった。
「
と叫んだ。
しゃがみこんだ
「小鳥売っ!」
「ごめん、
「どけ!
背が高い
(この
真比登は素早く走り、
「
↓手書きの挿絵です。近況ノートに飛びます。(前に描いたやつ)
https://kakuyomu.jp/users/moonpost18/news/16818093076213563530
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