ソウルパーク

西条三日月

ソウルパーク 4月~10月編

第0話 あらすじ

2024年4月3日。


いつもの通学路。いつもの景色。


新学期の新たな日常の期待や不安は。


この日を境に無くなった。


まだ肌寒い曇り空の春。


道路を通る車の音 髪を揺らす風の音


しかしこの日は違った。


僕の日常は理解出来ない程の非日常へと変わる分岐点──────




突如として遠くで悲鳴が響き渡った。


最も大きい少女らしき声。そして大勢の叫び声。


僕は迷わずその方向に走っていた。


近づくにつれ、逃げ惑う人々が増えて行く。


逃げ惑う人々の合間を縫って進む。


やっとの思いで現場に辿り着き、僕はその光景に絶句した。


そこには象より大きな青黒い犬が立ち尽くしていた。


青黒い毛並みからは闇の中から現れるような冷たい光を放ち、歯には血が大量に付着し、地面には踏み殺されたであろう複数の死体と血の雨でも降ったかと思うほどの血溜まりが出来ていた。


そしてその恐ろしい犬の前には少女が二人。


周りにはスマホを構えて撮影する若者バカが数名。


少女達をよく見ると片方の脚が潰れており、もう1人はそれを地面につかないように支えて泣いている。


突然犬の大きな足が撮影している若者の頭部へと振りかかった。


若者の頭部は跡形もなく消え、トマトを潰したみたいに血飛沫が飛び散る。


それを見た僕は今まで勝っていた好奇心や興味は恐怖へと一瞬で変わった。


僕の本能が告げている。


アレには勝てないと。


犬は鼓膜が破れそうなほど大きな声で鳴き、少女の方へ飛びつく。


僕は咄嗟に少女達の方へ走り、少女を庇う。


「危ない!」


僕の足は勝手に動いていた。


磁石に吸い寄せられるように自然に。


庇わなきゃ、そう思う前には動いていたんだ。


少女達を突き飛ばし、自分自身も避けようとする。


しかし犬は容赦無く僕の左腕を食いちぎった。


痛いとか怖いとかという物は無かった。


アドレナリンが大量に分泌していたのだろう。


犬は僕に向かい前足を振りかかり、突き飛ばされ建物にぶつかる。


その重い一撃で骨や臓器が潰され、僕は意識を失いそうになった。


その時の事だった。


目の前に小石くらいの大きさの綺麗な石があった。


ダイヤモンドやルビーのような美しさじゃない。


こんな状況で石なんて見てる場合じゃないことは分かっているが


その石から目が離せなくて、無意識にその石を掴もうとする。


石を掴んだ瞬間、石は手にめり込み、内部に入って腕を上り心臓部へと流れていく。


痛みは無い。


血液が体内を流れるように自然に。


身体が痛みで痺れているのか、電流が流れているような激痛が走る。


この時違和感を感じ、自分の左肩を見た


左腕がある。血は滴っているが動かせる。


骨や臓器も治っている感覚がある。


じゃあこの電流のような痛みは……


左腕をもっとよく見てみると筋肉がピクピク動いている事に気づく。


僕は理解した。これは電流の様な痛みでは無く、自分の身体に電気が流れている事に。


立ち上がって犬の方を見ると再び少女の方を狙っている。


僕は犬の前に出る。


「僕が相手だ」


ザァァァ──────


冷たい雨が僕の首に落ちる。


さっきまで勝てないと感じていた無力感は無くなっていた。


犬はさっきのように足を振りかかってくる。


雨と血が混ざりいい伝導体になったな。


僕は体に流れ続けていた電気を鋭い針のように足から赤く濡れた地面に流し続ける。


犬は感電し、痙攣しながら倒れる。


僕にも強烈な電流が流れて……


そして僕の意識はそこで途切れた。



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