第12話 荒野の木造集落その4

「旅の目的は分かった。お前の母親、リアムの服装に似た人物は……残念ながら、この集落には来ていないな。そんな奇抜な服装なら、誰かしら覚えているだろうしな。レイ、ライお前たちはどうだ?」

「僕もそんな人見た記憶はないね」

「わたしもレイと同じで見てないよ」

「ここは俺たち三人を含めても二十人しかいない小さな集落だからよ。こいつらが見てねぇなら、やっぱりここには立ち寄ってないんじゃないか。残念なことではあるが……まあせっかくだしよ、集落にいる間はここに泊まりな。つっても、狭いからかたまって寝てもらわないといけないけどな」

「――分かった。でも滞在中は野外で大丈夫」

「はぁ~? そういうわけにもいかねぇんだよ。自分の子供と年が近いやつを外に放り出すとか、俺の神経が疑われるわ。それにここにいる子供はレイとライの二人だけだしよ、こいつらの遊び相手になってやってくれよ。な、いいだろ?」

「――了解、じゃあ泊まる」


 こうしてリアムは暫くの間、ダート家に身を寄せることとなった。

 

 リアムがダート家の世話になってから数週間が経過した。旅支度は迎え入れてもらった翌日にはすでにもう終えていたが、次の目的地についての情報が何一つ得られず行き詰っていた。今まで訪れたことがある集落のなかでも、開放的なほうではあるが、人が踏み入るには少々厳しい地域にある。来訪者は極端に少ない、さらに住民の半数は高齢者という負の連鎖、端的に言えば先の無い集落。危険を冒してまでそんな集落に足を運ぶ人など皆無だろう。


 トントンと一定間隔で釘を打ち付ける小気味いい音色が奏でられている。その奏者はふらりと集落に訪れた可憐な少女。力作業など到底できなさそうな見た目に反して、その少女は慣れた手つきで淡々と集落の改築作業を行っていた。

 まずはじめに少女が手を付けたのは自分が寝泊まりしている家屋。隙間風は入り放題、屋根から雨水が滴り落ちる。野宿ばかりしていた彼女にとっては些細な問題であり、別段気にする必要すらない。ただどうしても慣れないことが一つだけあった。それは人間の子供が夜な夜な抱き着いてくることだ。日が落ちるとこの地域は極端に気温が下がる。その寒さから身を守るためか無意識に人間は暖を取ろうとする。その結果、前述のようなことが起こる。人間と寄り添って寝たことがないリアムにとっては、それが苦痛で仕方なかった。ならば、寄り添わなくても眠れるような環境に作り替えてしまえばいいと、彼女は考え行動に移した。

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