第9話 荒野の木造集落その1
草木の一本も生えていないひび割れた荒野を鼻歌まじりに闊歩する人影が一つ。頭上には太陽が燦々と輝き、大地を照らす。その日差しは常人であれば、即日陰に逃げたくなるほどの高温に達していた。その上、乾燥した空気によって体の水分は容赦なく奪われていく。そんな過酷な環境に晒されているにもかからず、その人影は苦悶の表情を浮かべたり、足取りが重くなったりすることはなかった。それどころか微笑みながら、ステップを踏む余裕さえあった。
「ねぇおもち本当にこっちであっとん?」
「チュチュ」
「あの人間の言ったことを信じないのかって――信用していないわけないやん。ただずっと代わり映えのしない景色ばっかで見飽きた。だから、ちょっと言ってみただけやん」
「チュー?」
「本当だって、リアムも信用してるって――って、おもちあれ見て! あの奥に見える瓦礫の塊!」
リアムは自ら言葉を遮り、遠目に見える瓦礫群めがけて走り出した。胸ポケットからはおもちが顔を覗かせ、ゴール地点を欠伸をしながら眺めている。
二人が目指していた瓦礫群は一般的には
「――到着っと。それにしてもここも前のとあんまり見た目変わらんな。人間は同じようなのを創るのが好きなんかな?」
「チュチュウ、チュ!」
「そんなことよりも、さっさと中に入ろうって? はいはい、承知承知」
リアムからしてみれば、こういった集落はどれも似たり寄ったりで違いがあまり分からなかった。そこで、彼女は滞在している集落の情報をメモ帳に書き込むことにした。それ以外にも自分が体験したことをその都度、書き記すようにしている。これも全てはお母さんと再会した際に、自分の体験談を話して目いっぱい褒めてもらうためである。ついでに言うと、この魅力的な案はおもちから授けられたものである。
リアムは木製の防扉を数回叩き「誰かおらん~?」と呼びかけ反応を待った。過去に防扉をこじ開けて、無許可で集落に入ったことで、要らぬもめ事を起こしてしまった経緯がある。その経験によって、学び得た集落に入るための礼儀作法。儀礼的ながらもそれを行うようになってからは、人間に絡まれることは無くなった。ただし、一部例外を除いてではあるが……。
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