グランピング・カフェ&キッチン 『シリウス・プラン』

天風 繋

第0話

『こんにちは、御来店ありがとうございます。

当店は、全天候型室内グランピング施設となっております。

グランピングをご存知では無い?

そうですか。

『グラマラス』『キャンプ』を組み合わせた言葉で、『魅力的で華やかなキャンプ』になります。

テント設営やバーベキュー道具を準備しなくても気軽にキャンプを楽しめるのです。

是非、お客様も堪能していただければと存じます。

でわ、当施設のご案内をさせて頂きます。

当施設は、4つのエリア分けを行っております。

グランピングとしましては、3つになります。

実は、御自身のテントをお使い頂ける『フリーサイト』の棟が御座います。

全天候型と言うのも、外観をご覧になられてお分かりの通り全て室内となっております。

当『シリウス・プラン』がご提供させて頂いておりますエリアは、それぞれの特徴に合わせた名称を使用しております。

まずは、『フルール』で御座います。

四季を思わせる草花や樹木の中に大型のドームテントを8張り設置させて頂いております。

テントとテントの距離は、極力不快にならないよう離させて頂いておりますのでご安心下さいませ。

次に、『プレージ』で御座います。

湖畔をイメージさせて頂いており、砂地に8張りのテントを設置させて頂いております。

中央の湖では、釣りやボートなどアクティビティをお楽しみ頂けます。

最後は、『フォレット』で御座います。

木々に囲まれ、動物達と戯れる事が出来るエリアで御座います。

こちらでは、ハンモックも御用意がありますので御自由にお寛ぎ下さいませ。

各テントには専用のコンシェルジュがおりますので御用の際はお申し付けくださいませ。

これは失礼致しました。

私は、当『シリウス・プラン』の総支配人をしております神楽坂 久音と申します。

どうぞ、よろしくお願いします。』


俺は、テレビに映る好青年?を観ながら悶えていた。

くっそ、恥ずかしい。

なんだこれは。

自分を客観視するとこうまで恥ずかしくなるとは。

黒髪の特に特徴のない青年。

なのだが、この日は「ミヤ」にめいいっぱいのオシャレをさせられ妙に小綺麗だった。

メイクまでされ、自分とは思えないほどだ。

そして、俺が悶えるの姿とテレビの姿を見比べるような視線を隣で座る銀髪の女性が送ってくる。

やがて、自慢げな表情を浮かべる。

長く尖った耳に、整った顔立ち。

透き通る様な銀髪は、項で一つに纏めている。

彼女は、エルフ人種のみやび

数年前、この世界に迷い込んだ僕と最初に出会った人だ。

この世界は、元いた世界とほとんど同じ。

違うのは、住む人々が所謂ファンタジーの住人だということくらいだ。

魔法のような神秘的で不思議なチカラはない。

普通に容姿の違いや長命人種が存在しているだけである。

雅…「ミヤ」も実年齢は。


「痛っ」


俺の脇腹に激痛が走る。

見るとミヤに抓られていた。


「なんか、失礼な事考えてないかなあ?」

「そ、そんなことないよ」


僕は声が上ずりながら視線を逸らす。

何故、バレたし。

エルフ、怖っ。


「さて、今日もお仕事頑張りますか」


そう俺が声を掛けると皆、休憩室を出ていった。

残ったのは、ミヤと黒髪だがどこか青みかかったショートヘアのピンと伸びた獣耳の少女「シズ」…雫だった。

2人とも黒のスラックスに、白のワイシャツを着ている。

ワイシャツの上から、三ボタンのベストを着ている。

ミヤはスレンダーだが、シズは少し胸元が窮屈そうである。

また、俺の脇腹に激痛が走る。

ミヤが、冷たく蔑むような眼差しを向けている。

だから、なぜ気付く。


「今日は、ミヤがフォレット。

シズがフルールで宜しく」


2人は、頷いて休憩室を出て行った。

俺は、頬を張り気合を入れて休憩室を後にする。

今日も頑張ろう。

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