第二章 猫又の国を駆ける、迷い猫

2国:第6話 温かな、あの子の腕の中、丸まって眠る夢を見るの ★迷い猫SIDE

 陽だまりの中、丸まって眠る夢を見る。


 それはミーニャが、ワー・キャットではなく、まだ〝ただの猫〟だった頃。

 人間に、いわゆるというやつで。


 お気に入りの場所は、外の景色が眺められる窓際。

 そして――


『ミー……ちゃん、いい子ね、暖かいわね、ふわふわね――よし、よし』


 人間の、女性――いわゆる、、というやつで。

 猫には人間のことは、よく分からないけれど。人間の中で、きっと世界一の美人だろう。人間の中で、きっと世界一、優しいだろう。


 その、長い両手で、ふわふわの三毛猫を、ゆっくりと抱き上げて。


『世界で一番、大好きよ――ずっと、一緒にいましょうね』


 そう囁いて顔を寄せてくる、彼女の腕の中で、丸まって眠る。


 温かな、記憶。



 迷い猫の見る―――幸せな、夢。



 ◆     ◆     ◆


「――――待って!」


 起き抜けに手を伸ばし、ミーニャは叫ぶ。

 温かな陽だまりでも、腕の中でもなく、冷たい風が吹き抜ける家屋のの下で。


「っ。寒っ……ニャア……」


 夢の中との温度差か、ぶるり、寒風に身震いするミーニャ。



 この世界は、モンスターのもの――まだミーニャが〝ただの猫〟だった頃、モンスターの侵略により、元々暮らしていた地域から追いやられてしまった。

 そして家族が逃げ延びようとする際、だった女性とも、はぐれてしまい。


 それからミーニャは、ずっと彼女を、探し続けている。

〝ただの猫〟だった頃から、実は自分自身もモンスターで――〝ワー・キャット〟だったと知り、獣人の姿と化した今となっても。


 モンスターの、あるいは猫の感覚では、はぐれたのがだったのか、いまいち実感は湧かないけれど。


 今も、昔も――ミーニャの目的は、ただ一つ。


「ミーニャは、帰らニャいと……あの子の、ところに……!」


 ただ、それだけを望み、それだけを目指し。



 迷い猫は、今日も今日とて、温かな腕の中の夢を見る――

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