メスガキタレット

まだ温かい

メスガキタレット

「先輩、この可愛い女の子みたいな回転式銃座は何ですか?」

「これはメスガキタレットだよ」


 僕の目の前にある不思議な物体に対して沸いた、ごく当たり前のような疑問に先輩が答えてくれたけど、全然意味が分からない。


「メスガキタレットって何ですか?」

「撃ってみればわかるよ」


 えっ、銃を?


「銃刀法違反になりませんか?」

「平気平気、据え置きだから所持してるわけじゃないでしょ」


 それもそっか。じゃあ試しに撃ってみよう。


──ザコッ……ザコッ……──


 トリガーを引こうとするが、硬くて全く動かない。


「ハハハ、セーフティを外さないと撃てないよ」

「あっ、それもそうですよね!」


 暴発したら危ないんだから、セーフティなんてあって当たり前じゃないか。いや街中に回転式銃座があるのがおかしいだろ。


「ここを下げればセーフティが外れるんだ」


──ザァッコン♥──


 特徴的な機械音が響いた。これでこいつはもう、弾を発射することができるんだ。


「じゃあ、撃ってみます」


──ざぁこ♥ ざこざこざこざこざこ♥ ここここここここここ♥──


 分間400発の発射速度で目の前のビルの壁をハチの巣にしていった。人の群れを薙ぎ払う文明の利器ガキの力を目の当たりにした。


──ざこぷしゅう……──


「おいおい、全部撃ちきるなんて欲張りだなあ!」

「いやーすごい爽快だったんで、つい!」


 正直もっと撃ちたくなった。こんな小さい身体のくせにすごい威力だし、吸い付くような照準が名器すぎて離れがたい。


「これ、弾はどこにあるんですか?」


 そう先輩に聞いてみたら、先輩はズボンを降ろした。


「なっ、なんすか急に!?」

「弾はな、こうやって装填するんだよ」


 先輩はそう言って、メスガキタレットの銃身を横にしてから下着ごとローライズを脱がしていった。綺麗な弾倉の入り口が見える。


 メスガキタレットは、火照った銃身を真っ赤に染めて、緩んだ金具を淫靡に揺らしている。ちゃんと締めとけよ。


「ざぁこ♥ 装填くらいもっとチャッチャと出来ないのぉ?」


 まるでそう言っているかのように、怪しく光る照星を吊り上げてこちらを挑発しているのだ。照星二つは過剰だろうが。


「固定式弾倉だから、このまま突っ込んで中で出せばいいだけだ」


 そう言った先輩の股から伸びる薬莢が、メスガキタレットの弾倉の入り口に押し当てられて、ゆっくりと力づくで侵入していく。


「ひぎぃ!」


 メスガキタレットの悲鳴が聞こえた気がした。


「くうっ、こいついいぜ! 狭くてすぐ出ちまいそうだ!」


 先輩がそう言いながら抽送ピストンを続けていると、メスガキタレットの弾倉の入り口から一筋の真っ赤な赤錆が垂れてきた。その後すぐに先輩からうめき声があがった。


 溢れた火薬がメスガキタレットの足を伝ってキャラもの靴下にしみわたる。その内、女児用スニーカーの中まで浸透していった。


「ふう、パンパンにしてやったぜ」


 メスガキタレットの弾倉が先輩の火薬で満たされた。


──ザァッコ♥……ザコン♥──


 装填された火薬が奥に送られる音がした。すぐにメスガキタレットの断面図が現れると、薬室に向けて殺到する無数の火薬の姿が映し出された。


 とぷん……火薬が薬室に入った。


── 装 填じゅせい 完 了 ──

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