ゲーム世界の奴隷商人の横暴息子に転生してしまったので、奴隷ヒロインを甘やかしてたら重たい愛を向けられるようになってしまった

ぷらぷら

第1話 奴隷商人の横暴息子

 あ、やっばい……詰んだ……


 目の前の鏡に映る自分の姿を目にした俺は絶望した。


 銀色の髪に血のように赤い眼……俺が知っている姿とは少し幼いが間違いない。

 

 今の俺はゲーム、『英傑の証』に登場する奴隷商人の息子———アルク・ウォルフレムだ。


 このゲームは平民出身の主人公が剣と魔法の腕で成り上がり、どんどん女の子を堕として行くというファンタジー要素のあるハーレムゲームだ。


 ヒロインは幼馴染や貴族、エルフ、獣人、女騎士、天使、女神、魔族などなど様々だ。


 その中でも一番人気のヒロインとの出会いのきっかけで登場するのがアルクだ。


 奴隷として捕まったヒロインをアルクが襲おうとしたところに主人公が登場。そのままアルクは首を飛ばされて死ぬ。


 そのあまりにも雑かつ、クズキャラらしい最後に俺もゲームをプレイしていた時はスカッとしたものだ。


 そう、俺はこのままいけば数年後、主人公に殺される。


 だが———


 俺はそんな惨めな死に方は絶対に嫌だ。


 どうせ死ぬなら美少女の胸の中で窒息死して死にたい。


「……決めた」


 強くなろう。


 主人公が来た時にせめて逃げられるように。



 ◇



 あれから5年の年月が経ち、俺は10歳になった。


「アルク、今日もやっているのか」


「はい、俺の日課ですから。」


 アルクの父、ジーク・ウォルフレム。代々続く奴隷商会の家系、ウォルフレム家の現当主でありながら名門学院を主席で卒業。軍師としての適正。魔法の腕は一流。


 とんでもなく有能な男だ。


「まさかあの横暴息子が毎朝剣を振るうようになるなんて想像もつかなかったぞ。」


「俺、そんな変わりましたか?」


「ああ、見違えるほどにな。うちの使用人たちもお前のことを揃って褒めていたぞ。5年前から人が変わったようだとな。」


「はは……そうですか……」


 実際変わっちゃってるしなー……


 まぁ、父上も喜んでるし、良しとしよう。


「父上は早朝の散歩ですか?」


「いや、お前に話があってきた。」


「俺にですか?」


 一体何だろうか……今の話の流れからして怒られるようなことではないないとは思うんだがそれも確定ではないし……


 そんなふうに思考をめぐらせていると真剣な表情に切り替わった父上が話を切り出した。


「私は今までこのウォルフレム家は私の代で終わりだと思っていた」


 それは恐らく俺がアルクになる前のことを言っているんだろう。あの横暴さでは当主の座を継いだ所でウォルフレム家が衰退していくのは必然だ。


 ゲームではアルクが死んだあと、ウォルフレム家は崩壊する。


 父上も主人公に殺されていたはずだ。


「だがお前は変わった。私の想像しなかったほどに。今の変わったお前にならこれを言える。」


 目を閉じ数秒何かを考えた後、決心したような視線を俺に向けた。



「私は……お前に家を継がせたいと思う。」



 はっきりと、そう俺に告げた。


 ……え? 俺が家を継ぐ? 


「父上……それはどういう……」


「そのままの意味だ。お前にウォルフレムの財、コネクション、地位。全てを譲る。」


 こんなイベントは当然ゲームには存在しない。つまりこれはアルクの運命が大きく変わったということだ。


「だが、すぐに譲るわけには行かない。お前には私から課題を出そう」


「試練ですか?」


「ああ、我がウォルフレムの家訓は覚えているな?」


「はい、もちろんです。奴隷の幸せを第一に願え。ですね。」


 我がウォルフレム家は代々質のいい上級奴隷を扱ってきた。珍しい種族や容姿端麗な者など、様々な奴隷がいる。


 そのため、貴族や王族からもいくつも買い取りを申し込まれる。


 ウォルフレムの奴隷というだけで普通の奴隷より何倍も価値がある。


 だがただ金を積めばウォルフレムの奴隷を買えるわけではない。買い手の素行、性格、金銭面、友人関係、前科がないかなど様々なことを調べ上げた上で奴隷自身と当主である父上が認めた場合にのみ迎えることができる。


 我がウォルフレム家はそうやって信用を勝ち取ってきた。


「ああ、そうだ。我々はあの子達を幸せにしてやる義務がある。身寄りのないあの子たちの親代わりのようなものだ。お前はその事をよくわかっているようだな。」


 息子の成長を喜ぶように優しく微笑んだ。


「ついて来い、課題を伝える。」



 ◇



 真っ暗な倉庫。魔道具の明かりはなく、父上の持つ松明だけが周囲をぼんやりと照らしていた。


 ここはたしか来たばかりで凶暴な奴隷や、問題がある奴隷がいる場所だったはずだ。


 父上はそこの一つの檻の前で足を止めた。


 檻には布が掛けられており中の様子はわからない。


 父上が掛けられた布を取ると檻の中には痩せ細り、汚れたエルフがいた。


 白金色の髪に月色の美しい瞳を待つ彼女は前に立つ俺たちを見るとまるでこの世の全てを憎むような憎悪の目で睨みつける。


 俺はこの少女に見覚えがあった。


 ……ついに……きたか……俺が恐れていたイベントが……!


「父上、これは……」


 俺はわざととぼけたように聞く。


「数日前に買い取った奴隷でな、種族はエルフ、歳はお前と同じ10歳の少女だ。お前には今日からこの子の世話をしてもらう。」


 ゲームではも少し後のはずだが……こんなに早く会うことになるとはな……


 このエルフはレイラ。


 アルクが襲おうとして主人公に救われたヒロイン候補だ。


 

 

 【あとがき】


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