春告花は咲く

千崎 翔鶴

序 寿永の秋に

遺書

 これはすべて、僕の不徳の致すところなのでしょう。


 だからすべての罪は、僕にあるのです。僕にできる贖罪しょくざいは他になく、してやれることは何もありません。

 見るべきものはすべて見た。見たいものも、見たくないものも。

 もっと何かできることがあったのではないかと思いながら、もう今更何もできることはなかったのです。

 これはすべて僕の罪。僕が背負うべきものでしょう。


 せつ、とは。

 本当ならば僕は、そう在りたかった。

 来世は、木瓜ぼけになりたかった。


 精神的に向上心のないものは、馬鹿だ、と、言ってやれば良かったのか。


 木瓜咲かず。彼らの上に、花もなし。

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