しょうと

@Aiopro

ありのままで

生きるのは簡単で死ぬのは難しい。

カナタは、ぼんやりと国語の授業を受けながら、そう思う。誰かのために誰かを殺す、そんな話だった。殺した彼は島流しにあい、果たして彼の行ったことは正しかったのかと、そういった話だ。

カナタは廊下で人が走る音を聞いた、何人もだ、何人も走っている。

「ちょっと、自習をしていなさい」

あまりの騒々しさに、玉中先生は、廊下に出た。

少しして部屋がざわざわ、騒々しくなる。

「あ、あれ!」

生徒の一人が、向かい校舎の屋上を指さした。

男子生徒が屋上の安全柵を越えて、今にも落ちそう

だ。

人が死ぬのは簡単だ。


あっという間に、人が死んだ。

誰かもわからない人だが、この学校で、そういったことが起こってしまった。まだ、人生の三分の一もたっていないのに終わった。一万日も生きてはいない。人生は3万日程しかない、彼はこのことをすぐに忘れて、いつも通りに生きるためにこころを捨てた。


15年後、彼は言った

「人を殺すのは、罪です。殺人であろうと自殺であろうと。人生は短い。長寿だろうがたかだか、三万日しか生きられません。ありのままに生きなさい。生きるのは難しい。死ぬのは簡単だ。」


彼はそう言って。



屋上から、落ちた。

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