第三話 白鳩

 そこは、二階建ての赤い屋根の家。どこか懐かしい香りがする。

「ようこそ、我が家へさぁ、入って」と和が言うのであたしは和の家に入ることにした。玄関を通りあたしたちはリビングに行く。

リビングには本棚と祭壇が・・・

和はリビングに入ってすぐ祭壇に向かい手を合わせた。

「何してるんだ?和?」あたしは和に聞いた。

「ん?これか死んだ母と父に今帰ったって言ってるだけだ」と和は答えた。

「ふ~ん、そうなんだ。」あたしは適当に相槌をした。

「お風呂準備するから。ちょっと待ってね。そこら辺でゴロゴロしてて」と言い和はリビングを後にした。

あたしは本棚から本を取って本を読んだ。


本を読んでいると和がリビングに戻った。

「ん?何を読んでいるんだ?志乃」と和は表紙を見る。

「あぁ、それか」と言う和

「ふ~ん」とだけ言った。

そして、和はキッチンに向かって料理を作りだした。

野菜を切る音肉を叩く音何かを煮込む音何かを焼く音

香ばしい匂いがして、あたしはキッチンに向かい和に「何作ってるの?」と聞いた。

和は「カレー」と答えた。

「えっ、カレーやった!!!」あたしは手を挙げて喜んだ。

「あと、ちょっとかかりそうだから先にお風呂入って来て」と言われあたしは風呂場に向かった。


「いままでシャワーだったから久しぶりの湯船だ。」とあたしは浴槽に向かった。

浴槽に入りあたしは体や髪を洗いだした。

あ、あれ、あたし何やってるんだっけ?と思い始めた。

「あ、あたし確かあの方の命令を裏切ったんだよな。終わったな。多分、兄貴は殺されるな。まぁ、兄貴は殺されていいや。」

あっ、とあたしはふと思った。助けてくれた和はどうしようあの方ならもしかしたら殺さ…嫌だ。そんなの…あれ、でも何であたしこんな事思うんだろうあんな勉強しか取り柄しかないアイツを‥‥そうかアイツは初めてのとも…


 あたしは浴槽を急いで出た。まるで、逃げるように…

その時、脱衣所に和が来た。

「ど、どうしたの?志乃?そんな怯えて」と和は驚いて言った。

「いや、何でもない」と少し泣きそうに言った。

「本当にどうしたの志乃?」和はあたしの手を掴む。

「だから何でもないよ!!!」と和の手を放そうとしたが和は離さなかった。

「もう、離してよ!」泣きながらあたしはそう言った。

「離せるわけないだろう。泣いてる奴をほっとく人がどこにいる。それも大事な友達だったらもっとほっとけないよ。」


 あたしは和の言葉を聞き膝から崩れ落ちた。

そして、あたしは泣き叫んだ。

「大丈夫だよ。」と和はあたしを優しく包み込んでくれた。

あたしは嗚咽おえつを止めるのに必死だった。

和はあたしの目を見て「大丈夫だよ。大丈夫。一緒にお風呂入ろう」と言った。

あたしは嗚咽しながら頷いて和と一緒に浴槽に戻った。


 あたしは泣いていた嗚咽をしながら止まる気はしない。

すると、和は「志乃。手の指を開くね」と言われた。

和はあたしの手の指を開いた。

「中指と薬指だけくっ付けるね。」と言われた。

そして、和はあたしの中指と薬指だけくっ付けた。

「それを胸に当てる。」

和は中指と薬指だけくっ付けた手をあたしの胸に当てた。

温かった。その瞬間あたしは泣く気がすっとなくなった。

「どう、少しは落ち着いた?」と聞く和

あたしは驚きながらも「うん、すごく落ち着いたよ」

「それは、良かった」とホッとなる和

「もし、またつらくなったり絶望した時罪が犯される時、その手の形をしてね。困ってるときに僕か誰かが志乃を助けてくれるから」と和はあたしをまた抱きしめた。


湯船につかっていると和が「ねぇ、そういえばどうして、あのギャングの悪い奴と絡むの?」と聞いてきた。

「ん?急にどうしたの?和。」

「いや、少し気になっただけ?というか、昔、警察の人がギャングっていうのは人生に吠える愚者の集りだ。って言ってたのになんで志乃はそんな所にいるのかなって?いや、喋りたくないんだったら別に話さなくても」

「いや、言うよ。どうせ、あの方はお怒りであたしは多分追放されると思うから。」


そう言いあたしはなぜギャングに入った理由を和に教えた

「あたしにはまぁ、珍しいけど家族で唯一の肉親の兄貴がいるんだ。両親が餓死してあたしたちは施設に入った。兄貴はあたしよりも頭も良くて大学で教授をやってる。兄貴はちやほやされて人気者だった。だけど、あたしは勉強が大の苦手だった。みんなはそれを笑った。施設の大人も嘲笑った。兄貴は唯一救ってくれる存在と思っていたが大学に入るとすぐに研究に夢中になってあたしの事を忘れたようになった。あたしは誰も信じられなくなったんだよ。だから、あたしを褒めてくれる人を探した。それで出会ったのが前橋様率いるBLACK PIGEONだった。前橋様はあたしを初めて褒めてくれて甘えさせてくれた。ただ、それだけだ。このくらいでいいか。和?」あたしは和に全部のことを伝えた。


すると、和が「僕でも良かったじゃん。何で僕にしなかったの?僕志乃をたくさん褒められるよ」と言ってきた。


それに対してあたしは和に指を指した。

「それは、和。アンタも入っていたけど兄貴と重なってあんたもいつかあたしを見捨てると思った。昔みたいに楽しく遊んでくれるとは思わなかった。」と泣きながら言った。


「いえば良かったのに…そしたら僕がたくさん褒めてあげたのに。バカ・・・志乃のバカ」と和も泣いた。


「ごめんなさい」と謝った。


「大丈夫。これから僕が一生守って褒めるから」また和はあたしを優しく抱いた。


そして、お風呂を上がりカレーを食べゲームをした。






「ちょっと、トイレに行ってきます。」とあたしは和に伝えた。

「あぁ、いってら。トイレ出たら右だから‥」と和は言いあたしはトイレに行った。

部屋を出てトイレに向かっていると

「やぁ、マイハニー」とあたしを呼ぶ声

あたしは後ろを見るとそこにいたのはあの方がいた。

「こんばんわ、ハニー依頼失敗したらしいね。」あの方の顔はニッコニッコに笑っているがその目は笑っていない。

「い、いやいや」あたしは腰を抜かした。

「ハニー分かってる?ルールは守らない子は殺さないとな…そして、家族も確か兄貴だったよな。イールド校で研究をしてるんだってぇ今、俺の部下が殺しに行ったから大丈夫だ。そして、ハニーお前は公園に来い。」前橋はあたしの腹を蹴った。あたしは気絶した。


 志乃がトイレに行ってからだいぶ時間経つ。

大丈夫かな?志乃?と思っているとトイレの方から物音が…

僕は心配になりリビングを出た。

廊下に出ると志乃を担いで窓から出ようとする男の姿が…

僕は勇気を出して「おい、志乃をどこに連れて行く気だ!!」と言った。

すると、男は「おやま~ハニーの友達かな?ハニーの友達さん。公園でこの女を処刑いたしますのでもし、よければ来てください。それでは」と男は言い

窓から志乃を担いで夜の闇に消えてしまった。








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