第19話 八人目・チャイナ少女
「さて、次はサンザシか」
人がまばらな場所を探して玄関の脇にある階段の一階と二階の間の踊り場に座る。ヒントとパンフレットの地図を見比べる。
「一つ目からかなりハードな隠し方をされてたことから察するに、簡単には見つけさせてくれないだろうね」
俺が呟くと、宇佐ちゃんは頷いた。
「シンプルに考えて、園芸部の花壇にあると思うけど、それじゃあさっきのスタンプの難易度と釣り合いが取れないよね」
行き詰まってため息を吐いた時。
「ユーリはどこへ行ったんですの!?」
大きな声で怒っている少女が階段の下を通った。
「三原君はなにをしているのですか!」
俺と宇佐ちゃんは顔を見合わせて急いで声の主を追いかける。
少女は綺麗な白い髪を右肩に流して、赤いチャイナドレスを着こなしていた。高いヒールでコツコツと歩いている。このスタイルの服を着るには、体型維持が大変そうだ。歩くスピードからして、高いヒールに慣れているようにも見える。
「……かっこいい」
宇佐ちゃんは追いかけながら呟く。思わず口をついて出た、という雰囲気だ。俺もチャイナ少女の姿はかっこいいと思う。全くもって同意見だ。
「三原君はどこへ行っているのですか!? あの猛獣使いがいないと、この文化祭は終わりですのよ!」
腕を組んで歩くチャイナ少女。あと少しで声がかけられる距離だ。
「すみません! 三原椎名さんを知っているんですか!」
大きな声を出してチャイナ少女の肩に手をかけた。チャイナ少女は面倒そうに顔を歪めて振り返る。
「あなた、わたくしに声をかけるなんて良い度胸ですのね」
キッと俺を睨むチャイナ少女に、宇佐ちゃんが間に入った。
「すみません! 私たち、ケイ先輩とユカリ先輩に頼まれてユーリさんを捜しているんです。もしよかったらユーリさんについてお話を聞かせてください」
懇願する宇佐ちゃんにならって俺も頭を下げた。
――俺らは頼まれたからやっているけれど、本来は運営がどうにかする問題なんじゃないか?
そうは思ったが口には出さないでおいた。何かと拗れそうだったからだ。
「はあ。あなた達が……。こちらにいらっしゃいな。生徒会が集めた目撃情報をお渡しいたします」
大きなため息を吐いて、踵を返し、コツコツと生徒会室へ向かい出した。
「ありがとうございます!」
俺と宇佐ちゃんは頭を下げて、チャイナ少女の後を追った。
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