第18話 手を繋ぐ関係 どこから? 検索

「暗くて人が多いから我慢して。香りが近くなったら教えて。俺そういうのよくわからないからさ」

赤い顔で、それでも一生懸命に顔を動かす宇佐ちゃんを見て、俺は考えた。

――友達は手を繋ぐものなのか? いや、男同士で手は繋がないけど。女の子の友達だったらどうなのだろう?

少し考えて、面倒くさくなったので思考を放棄した。ゆっくりと教室を巡ることに専念する。

すぐに宇佐ちゃんは俺の手を引っ張った。

「ここ、この掃除用具入れから香る気がする」

俺は宇佐ちゃんと繋いでいる方とは逆の手で掃除用具入れを開ける。

綺麗なブルーローズが一輪挿しに生けてある。よく見れば、それは白いバラに色水を吸わせたものだとわかる。横にはスタンプが置いてあった。

「一輪でこの香りは少し強い気がするけど、これが“眠りの茨”で間違いないね」

宇佐ちゃんは嬉しそうだ。

「この一輪挿しの水にバラの精油が結構な量を垂らしてあるんじゃないかな」

「ああ、なるほど」

宇佐ちゃんは自分で言い、納得したようでスタンプを押す。

講演はもう締めの言葉を始めている。邪魔にならないようにゆっくりと教室を出た。

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