第8話 養殖系……?
「三対一かよ。もういいシラけた」
舌打ちをして女子生徒をかき分けて早足で逃げようとする男。
「ちょっと待てよ!」
俺が捕まえようとすると、ケイちゃん先輩は肩に手を置いて首を振る。
「君はあの子を」
振り返るとアイドル四季が美少女に声をかけていた。
「怖かったよね。大丈夫?」
ブスッとした顔で美少女は首を振った。落ちたヘッドフォンを拾い上げる。
「別に大丈夫です。慣れているので」
優しく声をかけるアイドル四季に目線も合わせず応える。
あの状態では俺が声をかけても意味はなさそうだ。と、ケイちゃん先輩に顔を向ける。そこにはすでにケイちゃん先輩はいなかった。足が速いのか、気配を消すのが上手いのか。どういう原理か気になる。
「大丈夫なら俺はこれで」
アイドル四季が側にいるなら大丈夫だろう。俺は背中を向ける。
「あの! 橋谷中の!」
振り返るとキラキラした瞳で美少女は俺を見上げている。
「私、鈴石中の神田綺月と言います。良かったら私と、文化祭を回ってくれませんか?」
完全に計算された上目遣いで言われる。無視をされたアイドル四季は困ったように笑う。
「綺月ちゃん。良かったら俺が案内するけどーー」
「先輩はお忙しいですよね。私は彼と回るので」
神田さんは切れ味の鋭い返しをした。どうやら神田さんはアイドル四季よりも俺の方がお気に召したようだ。
「俺も一応用事があるから、神田さんは四季、先輩に一緒にいてもらった方が良いと思うよ。じゃあね」
「あ! 待って!」
自己紹介をした時とは比べものにならない声が出ている。おそらく素の声だ。
振り返らなくても、声が聞こえてきた。アイドル四季が神田さんに声をかけている。相手にはされていないようだが、周りの女の子の目の色を見るに、これ以上むげにもできないだろう。
俺は神田さんを置いて一年二組を目指した。
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