第1話 神様って人間っぽい!?
「ま……まも……護さん!」
徐々に意識が戻りゆっくり目を開けるとそこは見たことのない空間に会ったことのない金髪の少年がそこにいた。
誰だ?どこかで会ったことあるかな?こんな流暢に日本語をしゃべる外国人いたら忘れるとは思えないんだけど……
「会ったことはないよ護君。いや、ある意味では毎日会ってる訳だけども護君にその認識はないだろうね。いつも奇麗にしてくれてありがとう」
いぶかしげな目を金髪の少年に向ける。
何を言っているんだ?毎日会ってるのに認識はない……理解できないな。おちょくられてるのか?
「そんな顔をしないでおくれ。僕は地球で言うところの神様で護君が毎日奇麗にしてくれていた神像の神アレクだよ。そして護君の後ろで小さくなってるのが守護神ランドロスさ」
護はアレクと名乗る金髪の少年に後ろと言われ、油が足りずギギギギと音が鳴っていると錯覚するほど警戒心高くゆっくり後ろを振り向く。そこには長身筋肉粒々で大きい髭が特徴的なおじさんが申し訳なさそうな表情で驚く程小さく丸まっている。
どういう状況なんだ?神を名乗る二人は一旦置いておくとしても前には見知らぬ少年後ろは丸まったおじさんとカオスすぎないかな……
「信じられないのは分かるけど自分の今の姿を見てみるのが一番早いかもね。ここに魂の状態である護君を長居させると霊格が耐えられなくなって消滅しちゃうから申し訳ないけど早速本題にはいっていいかな?」
アレクは申し訳ないと思いつつも話をすすめようとする。
「魂?霊格?……」
護はアレクが出した鏡の様なもので自分の姿を見る。
ちょっと透けてる?しかも裸なのに羞恥心も湧いてこない……。神様も何か急いでるようだけど焦る気持ちも湧かない。それにさっきから心を読まれてる?
「護君……疑問に全部答えてあげたいけど本当に時間がないんだよ。護君の魂は異常にしっかりしてるから耐えられてるけど本来ならもう消えかけてるか消えてるかしてる」
「じゃあ神様?これだけ教えてほしいんですけど……俺は何でこんなところでこんな状態なのでしょうか?確か仕事が終わって帰宅後お酒を買い忘れて出かけてたところまでは覚えてるんですけど……」
護はどうしても気になって聞いてみる。
「それは俺が話そう……」
後ろで小さく丸まっていたランドロスが目の前まできて申し訳なさそうに話始める。
「今日はアレクと一緒に護を肴に酒を飲みながら地球を見てたら思わず手を滑らせて酒壺を落としてしまってな……そしたら見事に護の頭に落ちて死んでしまったんだ。すまない」
つまり俺が死んだ時の記憶がないのは突然落ちてきた酒壺が死角から当たって即死だったって事か。
「それであってるよ。頭がトマトの様に……おっと話が脱線するところだった。急がないと本当に危ないから話を進めるんだけど、いつも良くしてくれてる護君に神である自分たちがミスで命を奪うなんてあってはいけない事だと心から思ってるし本当に申し訳ないと思ってる」
トマト……。
護は思わずトマトが潰れるところをイメージして顔を青くする。
「そこで何とか償えないかとランドロスと急いで話し合ったところ護君を転生させてはどうかという話になってね……転生することの利点としては魂を浄化しない為、記憶を保持できるという事が一つ。それともう一つこちらの方が大きいんだけど、転生時に神たちの介入が出来るという事があるんだ」
記憶が持てるのは嬉しいな。でも神の介入って何だろう……困ったら助けてくれる的な事かな?
「転生して終わったら過度な介入できないから毎回助けられる訳ではないけど転生時に加護をあげたり、転生する世界ではスキルや魔法が発達したファンタジーな世界だから魂が耐えられる範囲にはなるけどスキルを選んだり作成して付与し転生することができる」
「なるほど……スキルを作成と言うのは既にあるものではなく自分専用として作れるという事ですか?それはどんなものでもいいんですか?」
先ほどより透明度が増している自分の姿を見て護は頭をフル回転させて疑問を聞いていく。
「その考えであってるよ。出来るもの出来ないものはあるけどユニークスキルとして作成するからかなり無理を聞けると思う。なにか欲しいスキルでもあるのかい?ないならこんなことしたいや生前やり残したことをやれるスキルを作成するのもありだと思うよ」
良くある小説の定番ならアイテムボックスや鑑定とかよく聞くけど、生前やりたかったこと……か……
護は建築家としての人生を遡り、人生をかけて叶える予定だった夢を思い出す。
「かなり無茶を言っているのは分かっているんですけど……俺の夢は建築家として世界中のあらゆるものを見て自分でたくさんデザインして喜んでもらうのが夢だった。そんな都合のいいスキルなんてある訳ないですもんね」
二人の神はあまりの予想外に頭に手を置きあまりの苦悩に整った顔を歪ませる。
「護君はかなり強い魂だから多少無茶してもスキルを獲得できると思うんだ……だけどそんな無から何かを生み出すようなチートスキルを作成しようとした場合、護君が耐えられるか保証できないけど大丈夫?それでもチャレンジしてみる?」
「耐えられなかった場合はどうなりますか?」
「もし獲得できなかったら魂だけ霊格が落ちるだけで何もてにはいらないことになるよ」
もし言われてた通り想像するファンタジーな世界だった場合何も持たずにスタートは辛すぎるけど夢を諦めるのはな……
護はスキルを獲得できなかった時のリスクと夢を天秤にかける
「一つ質問なんだけど頂けるスキルは一つでしょうか?」
「いや、違うよ。獲得できるスキルの数は魂の強さ……霊格に依存する。護君が望むようなスキルを仮に作成して付与しようとしたときに魂のキャパシティを超えてしまう可能性もあるってことだね」
「なるほど……」
俺の魂は強いらしいけど正直、未知すぎて何も分からないな。
「仮にだけどもしスキルを造るなら護君がデザインした物を召喚したり仕舞ったりできるスキルってことであってるかな?」
「はい。それであってます」
……。
あまりの規模の大きいスキルに神たちも頭を抱える。
「なぁ。アレクよ……デザインできる物を絞ったら負荷も軽くなるんじゃないか?護は建築家だったのだしざっくり施設とかに限定してしまえばと思うんだが……」
目から鱗が落ちてるように見える程驚きを隠せない神アレクは無言でランドロスの背中を叩く。
「普段の脳筋はどうしたランドロス!さえてるじゃないか!」
「俺を闘神の奴みたいに言うんじゃねぇ!これでも護には悪い事をしたと本気で思ってるんだ……出来るだけ護の望む通りに生きられる土台を作ってやりたいんだ」
護はランドロスのミスで殺されたとは言え自分の為に必死になってくれてるのをみて嬉しく思う。
ランドロスもちょっとと言うかかなりいかつい見た目してるけど根っからの悪ではないんだな。アレスも必死になってくれてるしこんな二人の神に見守られてたなんてちょっと幸せだな。
そうしていると二人の神が少し照れた様子をみせる。
「護君……君の考える事は分かるんだからそんな素直に褒められると照れてしまうよ」
複雑な表情だが嬉しさを隠せず二人の神は護を見つめる。
「ではこうしよう……施設を召喚するスキルの作成と一つのスキルに一緒に盛り込むととんでもないキャパシティになりそうな倉庫や必要になりそうなスキルを別で付与することにしよう。それなら何とか収まる気がするよ……護君はそれでいいかな?」
護は全てを把握しきれてない為、不安を隠せないが二人の神を信じて身を任せる事を決める。改めて自分の身体を見ると半分以上透けてしまっている状態になってしまっている。
これ大丈夫かな……間に合うのかな?
「余裕がある訳じゃないけどまだ少し大丈夫だよ。スキルについても大丈夫みたいだし作成して付与するよ」
言うやいなや護の身体が光り輝く。
「うん……かなりギリギリだったけど上手くいったよ。だけど属性魔法のスキルなども付けてあげようと思ったんだけど限界みたいなんだごめんね……」
アレスは申し訳なさそうに召喚スキルは上手くいった事を告げる。
属性魔法は実際興味があるけどこの神たちが俺の為に頑張ってくれたんだ文句なんかつけれるわけないよな。
「でも安心して施設召喚はしっかり作り込んで妥協を一切してない出来栄えだと神の存在をかけてもいい……それに転生後に霊格が上昇すれば魔法を覚えられるはずだから安心してほしい。あくまでも今の現時点ではキャパシティを限界まで使ってるというだけだから」
アレクからの嬉しい教えに護は目を輝かせる。
転生後にもスキルを獲得可能なら身を守るスキルも覚える事ができそうだな。
そんな護の様子をみてアレクは思わず嬉しさで頬が緩む。
「そこでだ……魂のキャパシティを使わずにスキルを付与できる私の加護も付けてあげよう。これはずっと私を大切にしてくれた事への礼だ……神界でみていていつも嬉しかったぞ」
またしても護の身体が光り輝く。
護は何が変わったんだろうと手をグーパーして変化の無さに首をかしげる。
「アレクよそれなら俺からも加護を付与せてくれないか?護の人生を壊してしまったのはどんな言い訳をしても俺だ。転生する異世界は護の生きた世界とは比べ物にならないほど危険も多くある。おれは守護神として少しでも護を守ってやりたい」
「ランドロス自分が何を言っているのか分かっているのか?お前も最大級の加護を渡そうとしてるだろ、世界に二人の神からそれだけの寵愛を受けた存在がぽっと生まれたら護の身の安全が逆に脅かされるぞ」
「転生先を貴族にすればそのくらいどうにかなるだろ!護が転生してしまったら俺はもうほとんどなにもしてやれねぇ!今しかないんだ……頼む、創造神アレクよこの通りだ」
ランドロスはアレクに勢いよく膝と頭を地面に叩きつける。
そんなランドロスの土下座を見守っていた護は思わず涙してアレクと目を合わせる。
「もしよかったらランドロス様の加護もいただけないでしょうか。罪悪感もあるでしょうけどこれだけ自分を思ってくれる方の加護なら多少のデメリットがあってもランドロス様に守ってほしいです」
アレクは二人の熱に最初あきれ顔を見せるが、すぐに心配そうに子供を見守る父親の様な目を二人に向ける。
「わかったよ。ランドロスの加護も許可する……でもその代わり護君はスキルの付与に大量の加護の影響で生まれてしばらくは衰弱するだろうし意識がはっきりするのも生まれて数年後になると思うけどその覚悟はある?生まれて数年のうちに死んでしまう可能性も0ではないんだよ?」
死んでしまう可能性を示唆されて護は思はず息をのむ。
それでもこの思いを無視するのは後悔するよな……
「大丈夫です。もしそれで意識が戻る前に何かあったとしても二人を恨むようなことは致しません」
ランドロスはやっと立ち上がり護を見て手をかざす。
「守護神であるはずの俺が色々振り回してしまってごめんな。」
そういいながら護に加護を付与する。
何だこれ……体が何か分からないけどおかしいな。
護は体が異常にだるく異変を感じる。
「それは魂のキャパシティとは関係ないとはいえ神の最大級の加護を魂に刻んだのだから異変の一つや二つ出てきてもおかしくない。本来加護なんてものは与えても少しだけなんだから」
ランドロスは驚きの表情を見せたあと護を心配そうにオロオロする。そんなランドロスをみて護は思わず笑ってしまう。
「ランドロス様大丈夫ですよ!何とかなります」
「護よ申し訳ないがスキルの内容や加護については転生後に確認してくれ。最後まで説明してあげたいがそろそろ護の魂が限界にきてるから早くしないと転生できずに浄化されてしまうぞ」
そういわれ慌てて自分の姿を確認する。そこにはもう足も見えず今にも消えそうな自分がいた。
これ大丈夫かな?アレク様とランドロス様を信じよう。
「それではありがとうございました!これからも楽しく生きていくのでお酒でも飲んでずっと見守っていてください」
ランドロスのお酒が原因で死んだにも関わらずお酒を勧めるとランドロスとアレクはお互いが目を合わせ困ったものを見るような目を護に向ける。
護は薄く消えていく自分をみて目を瞑り身を任せる。
それにしても人間味の強く優しさにあふれた神様だったな……また会いたいな。会えるかな?
「護君また会おう。ずっと見守っているよ私の愛しい子よ」
「護また会える日を楽しみにしてるぞ!」
見たことがないのに護の閉じた瞳には満面の笑みで見送るアレクとランドロスの姿が浮かんだ。
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