貴族転生〜異世界で移動式ホテル事業を始めます〜

神月ちとせ

プロローグ

 今夜は、先日世界の建築家たちがデザインや機能美などを競う世界大会で優勝して貰ったトロフィーを抱きしめながらお酒を飲み満足感に包まれながら寝た。

 6時半にかけた目覚ましで目を覚まし身だしなみを整えたあと、もう日課となった近所の道端にある神像の掃除をする。


「見かけてからはずっとほぼ毎日手入れをしてるけど、どんな神様なんだろう……」


 呟きながらも慣れた手つきで神像と自分で作った社を奇麗にする。

 初めて見つけたときは苔に覆われ蔦を巻きはたから見ると少し大きな石が道路脇に置かれている様にしか見えない。17の夏休みに何故か引き寄せられる様に石が気になり掃除をしてみたら徐々に手足が見え始め奇麗にした時には神像だと分かりとりあえず一祈りしたのが謎の神像との出会いだった。


 日課の掃除も終わり汗を拭う。

 そろそろこの社も作り直そうかな……高校生の時に作ったにしては頑張ってるけど流石にあれから10年も経つし世界一にもなって仕事も増えそうだしその前につくるか。


「せんぱーい。そんなところでなにやってんですか」


 部下の男が会社への迎えに来る。


「ああ……日課をちょっとな!荷物取ってくるからちょっと待っててくれ」


 ご飯を食べ忘れてた事を思い出し出勤途中にコンビニにでも寄ってもらう事を決める。


「今日は早出だから迎えを頼んだのは先輩でしょ!急いでください遅刻しますよ」


 ジャケットを羽織りゆっくり車に歩いてくる先輩をみてせかす。


「分かった分かったからそんな朝からガミガミ言わないでくれよ……まだ少し頭が痛いんだ」


 昨日の飲みすぎによって若干の二日酔いを引きずっている事もあってせかされても急ぐ気になれず軽く謝りながら車に乗り込む。


「先輩は朝からこんな道端でなにしてたんですか?そんなに二日酔いが辛いならギリギリまで寝てたらいいでしょう」


 小さな社を前にボーっとして立ってる先輩をみて気になって仕方がない。


「あれは俺が高校2年の夏に偶然見つけて社を造ったんだよ。それ以来朝の掃除や定期的なメンテナンスを出来るだけ欠かさずやってるんだ」


 これだけ凝り性で飽き性なのに何でこれだけ継続して続けられているんだろう?

 思わず考え込むが答えは出なさそうなので諦める。


「先輩の運が異常にいいのはそのおかげかもしれないですね。この間の大会でもトラブルが連発したのになんだかんだ解決できて上手くいきましたし」


 資料の紛失やデータがバグったり飛行機が緊急点検により欠航になりかけたりと多くのトラブルをこなしながらフォローした先輩の世界大会を思い出して今でも身震いがする。一つでも掛け合わせが狂ったら参加すら出来なかった可能性すらあった。


「馬鹿か!それは運じゃねぇよ……お前のフォローと俺の実力があったからだろ。運と言えば予定の飛行機がギリギリで離陸できるようになったことくらいだ」


 なんでこいつは自己評価がこんなに低いんだ?あれだけの事を乗り切ったんだもっと自慢してもいいくらいだろ。

 そんな話をしていると眠気に襲われてきたので安全運転を頼み今日の仕事場まで仮眠をとることにした。





「ガハハハハハ……今日も、ウェっ……平和だなぁ。今日も掃除してくれてるぞアレク」


 お酒の入った小さな壺を片手に地球を見下ろしながら掃除をしている護を肴に酒を飲みふける。


「ランドロス!仕事中に酒を飲むんじゃない。間違って酒壺を落としたらどうするんだ」


 酔っぱらってる守護神ランドロスを呆れながらも注意する。


「そんな怒ることないだろう。俺は守護神だぞ……ウィッ……仕事はしてるさ。アレクお気に入りの護を見守ってるよ」


 それにしても護は調子悪そうだが大丈夫なのか?創造神にばれないようにこっそりてをかせないものか?


「ランドロス、君が守る者は個人じゃなくて世界だろう……まぁ確かに護君は良くしてくれて嬉しいけどね。それにしても護君は相変わらず働き者だねぇ。ほとんど毎朝神像の手入れをしてくれて祈ってくれる……何もしてあげられないのが心苦しいくらいだよ」


 ランドロスの奴何か考え込んでるみたいだけど護君に手を加えようなんてかんがえてないだろうな?

 アレクは酔ったランドロスを怪しみ目を離さないよう心に決める。


「アレクも少し休憩にして飲もうぜ!」


 ガハハハハハ!と笑いながらアレクを酒に誘う。


「確かに最近問題が続いて働きづめだし休憩するかな」


 ランドロスは新しい酒壺をアレクに渡し護の出勤を見送る。


「それじゃあ良いつまみもあるし始めるぞ」


 なんだかんだ言いつつアレクも休みたかったんだな。最近忙しそうだったし息抜きにはちょうどいいだろ。


「「かんぱーーーーい」」


 壺が割れそうな勢いで二つの酒壺を当てて乾杯し車で眠った護をみて飲み始める。 

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